福岡市中央区でブロンズ像を買取りました!
◇骨董品買取の福岡玄燈舎です。
その日は、雲ひとつない秋の青空が広がる一日。福岡市中央区のとあるギャラリーの出張買取で、店の奥様からの電話が朝一番に鳴り響いたのは、何か特別な予感を呼び起こすものでありました。ご主人が生前、個性的な感性で集めたアンティーク品がずらりと並ぶギャラリー――その奥様から、すっかり埃をかぶって眠っている品々を査定してほしいという依頼。こうした依頼には、いつも特有の予感があります。かつて誰かの人生の一部を成していた物が、また新たな持ち主の手に渡る。そんな瞬間に立ち会う喜びと、これから紐解かれる物語への期待が、僕の足取りを軽やかにしてくれます。まあ、買取が成立した場合の事ですが…
そのギャラリーに一歩足を踏み入れると、まず感じたのは異質な静けさ。窓から差し込む柔らかな光が、店内に置かれた数々のブロンズ像や石膏製の人形、そして鉄製の奇妙な置物たちを照らし出しています。見る者を挑発するような前衛的なデザインの彫像たちが、まるでそこに魂を宿しているかのように、ひとつひとつが強烈な存在感を放っていました。
「ご主人が集められた品々ですか?」僕が奥様に尋ねると、彼女は穏やかにうなずく。
「ええ。彼はね、ただ見ているだけじゃなく、何かに触れた瞬間にビビッと感じることがあったのよ。その感覚で、次々と買い集めてしまうの。何も言わずに家に帰ってくると、大きなブロンズ像を車から降ろしているなんて、ざらにあったわ」奥様の言葉に、僕は思わず笑みを浮かべた。それは、骨董屋としても理解できる話です。物に込められたエネルギーや歴史、そして作り手の情熱に共鳴し、どうしても手に入れたいという衝動。それが物との出会いを決定づける瞬間です。私自身も、時折そうした感覚に駆られることがあります。
ひとつひとつの品を見て回る中で、感じるのはご主人の鋭い感性だ。これらのブロンズ像や人形たちは、いずれもただの飾り物ではない。どの作品も、独特な存在感を持ち、見る者の心を掴んで離さない何かがあるようです。前衛アーティストの作品と呼ぶにふさわしい品々も、店内を埋め尽くしています。
その中で、特に目を引いたのが一体の120cmはあろうかというブロンズ像でした。僕は、その彫像がこちらを見つめているような気がして、ふと足を止める。まるで、他の作品とは異なる、何か特別な雰囲気をまとっている。じっと見つめていると、どうやらこれは「田中昭」の作品らしい。名前を聞いて思い当たる人も多いかもしれないが、田中昭の作品はその繊細な造形美と大胆な構図で知られています。だが、目の前にあるこの作品は、普段の彼の作品よりも、一回り大きいのです。僕は、その迫力に圧倒されながら、細部まで注意深く観察していきました。
「これは…すごいですね」僕はつぶやくと、奥様はにこやかにうなずきます。「ええ、彼も特にこの像には思い入れがあったみたい。部屋の一番目立つ場所に、いつも飾っていたんですよ」
僕は、その言葉を聞いてますますこの像に引き寄せられました。田中昭の作品の中でも、これほど大きなものはなかなか市場に出回ることはありません。美術館に収蔵されていてもおかしくないような一品。慎重に細部を確認し、その価値を判断していく。彫刻のバランス、表情の微妙な陰影、台座の磨耗具合――すべてが、年月を経てなお保たれた美しさを物語っていました。僕は心の中で「これは間違いない」と確信し、買取を決断しました。その後、奥様に価格を提示すると、驚いたような顔をしながらも、すぐに承諾されました。「彼も、きっと喜んでいるわ」と呟くその顔は、どこか寂しげでありながら、安堵の表情が浮かんでいます。
その後、他のブロンズ作品や鉄製の置物も、同様に慎重に査定していきました。どれもご主人の審美眼に叶った逸品ばかり。僕はそれらをすべて買取らせていただき、奥様も満足された様子でした。
最後には、昼食までご馳走になり、軽やかな風が再び吹き抜ける中、僕はギャラリーを後にしました。その日は、何か特別な日だった。骨董屋として、こんな風に物と出会い、人との縁を感じることができる日々こそが、最高の喜びなのです。
骨董屋冥利に尽きる、まさに楽しい一日でした。このブロンズ像ついては下記で詳しくお話しておりますので最後までお付き合いください。宜しくお願い致します。
買取品の詳細
◇この「ブロンズ像」は重量感もありとても良い表情の女性像でした、作品名はブロンズ彫刻像「華ごろも」
1988年作でした。傷や塗装劣化も少なく状態もよいブロンズ像です。女性の上品で凛とした立ち姿がとても美しい作品です。ありがとうございました。
◆ブロンズ像の買取査定額…
◆田中昭さんのブロンズ像の買取査定額もしくは評価額ですがまず第一に作品人気度と製作年代、次に状態、付属品の有無などでより高価買取&できます。なお、今回買取した作品は「華ごろも」という人気作品で状態もよく、しかも大型サイズということで高価買取させていただきました。ありがとうございました。尚、ご自宅や倉庫にブロンズ像や彫刻作品ありましたら是非、骨董品買取の福岡玄燈舎にお声掛け下さい。宜しくお願い致します。
■過去の作品買取例
ブロンズ銅『裸婦美人像』 150,000円
ブロンズ『少女像』 120,000円
ブロンズ像『花を持つ女』100,000円
他多数
田中昭とは?
彫刻家・田中昭は、昭和4年(1929年)に富山県氷見市で生まれました。金沢美術工芸専門学校彫刻科を卒業後、畝村直久に師事し、日展を中心に活躍しました。日展では24歳で初入選を果たし、その後も40・41年と連続で特選を受賞。57年には会員賞、62年には内閣総理大臣賞を受賞するなど、数々の栄誉に輝いています。
田中昭の作品の特徴は、若い女性の何気ない姿態を、無駄のない肉付けで表現した優れた女性像です。自然なポーズと繊細な表情、そして洗練された造形美が魅力で、多くの鑑賞者を魅了しました。
代表作と作風の変遷
彼の作品には「空間」と「形の動き」に対する探求が見られ、立体彫刻だけでなく、環境アートやインスタレーションアートへの関心も深めました。特に、自然の中に設置された作品では、その周囲の風景との調和や対比が重視されており、自然環境の変化に応じて異なる表情を見せる彫刻として高い評価を得ています。
影響を受けた作家
田中昭は金沢美術工芸専門学校彫刻科を卒業し、畝村直久に師事したという経歴から、同時期に学んだ作家や、畝村直久の作風が田中昭に大きな影響を与えたと考えられます。
畝村直久は、日本彫刻界において重要な役割を果たした作家の一人であり、写実的な表現とモダニズムを融合させた独自のスタイルを確立しました。田中昭の作品にも、畝村直久の影響が見られる部分があるかもしれません。
ほかに田中昭に影響を与えた作家としては、フランスの彫刻家アンリ・マティスやアメリカの彫刻家アレクサンダー・カルダーが挙げられます。特にカルダーのモビール彫刻からは、動きとバランスを取り入れた彫刻表現に大きなインスピレーションを得ました。また、イサム・ノグチの自然と人間の関係をテーマにした彫刻にも深く共感し、田中の作品にもその影響が見られます。
さらに、日本国内では、同時代に活躍した彫刻家の岡本太郎や、陶芸家の河井寛次郎の作品にも感銘を受けました。彼らの伝統と前衛を融合させた表現方法は、田中が自身の彫刻においても、古典的な技術と現代的なアプローチを組み合わせるきっかけとなりました。
ライバルと芸術運動
田中昭は、1960年代から1970年代にかけて、前衛彫刻の分野で多くのライバルと競い合いました。特に、日本の現代美術運動である「もの派」の彫刻家たちとの競争は激しいものでした。もの派は、自然素材や日常的な物質を使い、その存在そのものを強調するアートを追求しており、田中もその影響を受けつつも、より形の変化や動きに焦点を当てた独自のスタイルを貫きました。
また、国際的な舞台でも活躍し、ヴェネツィア・ビエンナーレやサンパウロ・ビエンナーレなどで作品を発表し、欧米の前衛彫刻家たちと切磋琢磨しました。特にイギリスのアンソニー・カロやアメリカのリチャード・セラとの交流は、田中の彫刻の方向性に大きな影響を与えました。
終盤の活動と遺産…
田中昭は晩年にかけて、公共スペースに設置される大規模な彫刻の制作に力を入れ、国内外で多くのプロジェクトを手掛けました。特に環境との対話を重視した作品は、都市景観や公園、美術館の中庭に設置され、多くの人々に愛されています。彼の作品は、単に視覚的な美しさだけでなく、鑑賞者との対話を通じて新たな解釈を生み出す点でも高く評価されています。最近私が見た作品は神田の「健やかに」でした。
田中昭の彫刻は、現代彫刻の歴史において重要な位置を占めており、彼の作品を通じて形の自由な変化や空間との関係性を探求した先駆者として、後世に多大な影響を与え続けています。
◎関連、参考サイト
■その他の買取品目
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