福岡市城南区で仁清写通次阿山造の茶碗を買取りました!

立体的な八重桜がきれいな茶碗です
立体的な八重桜がきれいな茶碗です

◆10月も中旬とはいえ、外はまだ真夏のような気温で、半袖のシャツが汗ばむ今日この頃。そんな中、事務所の電話が鳴り響きました。「骨董品の査定をお願いしたいんですけど…」と柔らかい声が。依頼主は、昔から地元で知られる地主の奥様。何でも、先代の奥様が買い集めた茶道具や中国書画、李朝の花瓶や伊万里焼の壷などを売りたいとのこと。

「これはひょっとして…お宝かも?」と心の中でガッツポーズ。最近は、日常使いの茶器や、季節ごとに飾られるような掛軸など、ちょっと普通すぎるものばかりに遭遇していて、正直テンションは少し低めだった。でも、今回は代々の地主さんのお宅ということもあり、期待は膨らむばかり。「よし。勝負、勝負!」と意気込んで、現地へ向かいました。

そして、家に到着。ドアを開けると、出迎えてくれた奥様が「どうぞ、どうぞ」と手招きしてくれました。お話を伺うと、「義母は骨董屋やギャラリー、デパートで見つけたものを、直感で買い求めたのよ」とのこと。どうやら、骨董の世界には深く入り込まず、感覚重視で選んできたようです。部屋を見渡すと、なるほど、確かに趣味嗜好に一貫性がない…が、それがまたこのお宅らしさなのかもしれない、一人納得。

さあ、いよいよ査定スタートです。まずは、リビングに鎮座している大きな壷たちに目をやります。ああ、これは…伊万里焼だな。しかし、その隣には「これ、ちょっと待って」と心の中でブレーキを踏むような、明らかに最近のもの。かと思いきや、そのまた隣には、古めかしい李朝の花瓶が。「なんだ、これは宝探しでもしている気分だな」とひとりごと出てきたのは仁清写の茶碗。これにはさすがに「おお!」と心の中で喝采。普段使いの茶碗にまぎれて、こんな素晴らしいものが出てくるとは、油断できません。

ひとつひとつ箱を開けるたびに、宝と呼べるものが少しずつ見つかっていく感覚。まさに「玉石混交」という言葉がぴったりです。しかし、義母の方の買集め方にはある種のアーティスティックな個性が感じられました。やはり、直感で選んできたものには、本人の趣味と嗜好が色濃く反映されるのだなと、しみじみ。

そして、茶道具だけでなく、台湾や満州から持ち帰ったという掛軸や古い仏像、さらに李朝の花瓶なども発見されるたびに、「お宝だらけだ!」と心の中で興奮が止まりません。しかも、これらの品々は戦前のものも多く、歴史的な価値がしっかり感じられます。

最終的に、査定が終わり、奥様に買取価格を提示したところ、彼女は目を見開き「そんなに高いの!?」と驚きながらも、とても満足そうな笑顔を浮かべていました。「それに、間もなく引っ越しするお友達も骨董を処分したいそうだから、あなたに紹介するわね」と言っていただけたのは、嬉しいおまけ。

いやはや、これもまた骨董商の世界の醍醐味ですね。地道に査定を続けることで、思わぬお宝がひょっこり顔を出し、喜ばれる。それが何よりのやりがいです。

この仁清写しの茶碗については下記で詳しくお話しておりますので最後までお付き合いください。宜しくお願い致します。

買取品の詳細

◇この「仁清写し八重桜茶碗」は通次阿山造とあり八重桜の図はとても分厚い絵の具で施されています。ゴージャスですが細かいところも繊細なタッチでまさに芸術品です。乳白色のやや濁し手の上には金彩があり赤、緑、白、黒色で描かれています。この方は日本画を池田道夫に師事し、陶芸を父・通次寛斎に学んだ京焼を代表する人気作家の一人です。この品物は共箱と布も付属してあり割れ欠けもなくとても良い状態で保管されておりました。

買取査定額

個人的にとても大好きな図柄とあってかなりの高額で買取させていただきましたが実際には図柄にもよりますがこの作者は1万円から5万円くらいで買取を行っております。その他の仁清写しでは永楽作品では~30万円、宮川(真葛)香山が~15万円など作者でかなり金額が違いますのでご自宅に仁清写しの茶碗がありましたら是非、一度拝見させてください。宜しくお願い致します。

◆京焼の仁清写し茶碗の買取査定額もしくは評価額ですがまず第一に作者の人気度と図柄、次に状態、付属品の有無などでより高価買取&できます。なお、今回買取した茶碗は「通次阿山」という作家で状態もよく、しかも付属品や元箱なども揃っているということで高価買取させていただきました。

 

 

■過去の仁清写し茶碗の買取例

十六代永楽善五郎(即全)造 即中斎書付 150,000円
初代宮川(真葛)香山 仁清写    100,000円
五代大樋長左衛門造仁清写水指               80,000円
陽炎園造 淡々斎書付                                   70,000円 他多数

通次阿山とは?

 

◆通次阿山は、日本画の繊細な表現を京焼に持ち込んだ、現代を代表する陶芸家の一人です。その作風は、伝統的な京焼の技術に、日本画で培われた独自の色彩感覚と写実的な表現を融合させ、見る者を魅了してきました。

歴史と作歴

昭和13年(1938年)、京都に生まれました。九谷焼の名工・雲外を祖父に持ち、陶芸家の家系に育ちます。日本画を池田道夫に師事し、陶芸は父・通次寛斎に学びました。日本画で培った写実的な表現力と色彩感覚を、京焼に活かすことを目指し、独自のスタイルを確立していきます。1981年と1984年には淡交センター東京支社ギャラリーにて個展を開催。以降、各地で個展を多数開催し、その作品は高い評価を得ました。

代表作品と特徴

通次阿山の作品は、茶碗をはじめ、香合、花瓶など、幅広い分野にわたります。その特徴は、なんといっても日本画のような繊細な絵付けです。花鳥画や人物画など、様々な題材を扱い、それぞれの作品に独自の解釈を加えています。特に、茶碗の作品は、その写実的な表現と、茶席に馴染む落ち着いた雰囲気で人気があります。例えば、「祥瑞茶碗」は、伝統的な祥瑞文様を現代的にアレンジしたもので、その洗練されたデザインが特徴です。また、「色絵撫子平茶碗」は、撫子の花を繊細な筆致で描き出し、その美しさが際立っています。

通次阿山は、日本画の池田道夫と、陶芸の父・通次寛斎から大きな影響を受けました。池田道夫からは、写実的な表現と色彩感覚を、通次寛斎からは、京焼の伝統的な技法を学びました。これらの影響が、通次阿山の独自のスタイルを確立する上で、大きな役割を果たしています。

通次阿山の作品の魅力は、その写実的な表現と、伝統的な京焼の技術との融合にあります。日本画のような繊細な絵付けは、まるで絵画を見ているかのような錯覚を与え、見る者を魅了します。同時に、京焼の持つ温かみと重厚感は、作品に深みを与えています。今回の作品にもその特徴通り思わず絵の中に引き込まれそうな錯覚を持つ茶碗でした。

「仁清写し」とは…

「仁清写(にんせいうつし)」とは、江戸時代前期の名陶工である野々村仁清(ののむら にんせい、1574年~1656年頃)の作品を模倣したり、影響を受けた作風の作品を指します。仁清は、京都で活躍した京焼の代表的な陶工であり、特に茶道具や色絵陶器で高い評価を受けています。「仁清写」は、その技法やデザインを受け継いで製作された作品で、京焼の歴史において大きな影響を与え続けています。

野々村仁清とは

野々村仁清は、京焼を装飾陶器として高め、茶道具の製作に革新をもたらした陶工として知られています。彼は豪華で繊細な色絵の技法を駆使し、茶碗や香炉などを製作しました。仁清の作品は、器の表面に華麗な絵付けを施し、金彩を用いたりと、当時としては斬新で華やかなものが多く見られます。その作品は茶道の愛好家や大名の間で非常に高い評価を受け、江戸時代の京焼の発展に大きく貢献しました。

仁清が生み出したスタイルは、後世の陶工たちに深い影響を与え、その技法を模倣した「仁清写」と呼ばれる作品群が生まれました。これらの作品は、彼の美学と技術を引き継ぎつつ、各陶工が独自の解釈を加えて製作されています。

仁清写の特徴

仁清写の作品は、以下のような特徴があります。

  1. 色絵技法: 野々村仁清が得意とした色絵(色絵陶器)は、器の表面に色彩豊かな装飾を施す技法です。仁清写の作品では、この技法を忠実に再現し、青、緑、赤、黄などの鮮やかな色使いが特徴です。
  2. 金彩: 金彩(きんさい)は、金を用いて器の表面に豪華さを加える技法で、仁清写の茶碗や香炉などに多用されます。この金彩が、作品に一層の豪華さと格調を与えています。
  3. 上品なデザイン: 仁清の作風に見られる、優雅で上品なデザインが模倣されます。特に、茶道具や香炉などでは、花鳥や山水などの自然をモチーフにした絵付けが施されており、茶道文化に合った洗練された美しさを持っています。
  4. 薄手で軽量: 仁清の作品は、非常に薄手で軽く作られているのが特徴です。これは、茶道において器を手に取ったときの感触や、使用する際の実用性を考慮した技法であり、仁清写の作品にもこの薄手の作りが引き継がれています。

代表的な仁清写の作家

1. 永楽善五郎(永楽家)

永楽家は、代々茶道具を中心に京焼を製作してきた名門陶工の家系であり、特に11代目の永楽善五郎(1795年~1857年)は、仁清写を多く手掛けたことで知られています。

代表作品: 仁清写 色絵扇面香合 この作品は、茶道具の一つである香合(こうごう)で、表面に色絵で扇面(扇の形)を描いたデザインが施されています。扇面の中には山水や花鳥などが描かれ、華やかな色彩が特徴です。永楽家は仁清の作風を忠実に模倣しつつ、独自の優雅さを加えており、作品全体に上品な気品が漂います。

また、永楽家は、色絵だけでなく、黒釉や茶碗製作にも力を入れており、茶道界でも高く評価され続けています。

2. 尾形乾山

尾形乾山(1663年~1743年)は、野々村仁清の影響を受けながらも、自身の独自の作風を確立した陶工です。彼は、画家であり陶工でもあった兄・尾形光琳と共に、「琳派(りんぱ)」と呼ばれる美術様式を形成しました。

代表作品: 色絵朝顔図茶碗 乾山の「色絵朝顔図茶碗」は、仁清の影響を受けた色絵技法を用いながら、琳派特有の大胆で洗練されたデザインを加えた作品です。茶碗の表面には、大胆に描かれた朝顔の花が咲き誇り、その色彩のコントラストが非常に美しいものとなっています。乾山は仁清の技術を受け継ぎながら、装飾性を高め、より現代的でモダンな感覚を持つ作品を生み出しました

3. 清水六兵衛(しみずろくべえ、歴代)

清水六兵衛は、京都で代々続く陶工の家系であり、京焼を代表する一門です。仁清写の作品も多く手がけ、特に茶道具においてその技術と美学を発揮しました。

代表作

  • 色絵菊花文茶碗:美しい菊の模様が施された茶碗で、仁清の華やかな色絵技法を受け継ぎつつも、六兵衛らしい細やかな表現が見られます。
  • 色絵桜文香炉:桜の花びらを精緻に描いた香炉。仁清の影響を感じさせつつ、六兵衛独自のデザイン感覚が加味された作品です。

◎関連、参考サイト

MOA美術館

表千家北山会館

石川県立美術館

■その他の買取品目

 

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