福岡市城南区で尺八を買取りました!

とても状態の良い尺八です/骨董品・福岡
とても状態の良い尺八です

◇九月の半ば、関東は竜巻だの大雨だのとテレビのニュースが騒がしい。屋根瓦が舞い上がり、軽自動車がひっくり返り、あたかも「これは映画のワンシーンか?」と思うような映像が流れる。アナウンサーは「自然災害に備えを」と言うが、私の備えといえば、押し入れから出てくる得体の知れぬ骨董に、目を丸くする心構えぐらいしかない。

 その頃、福岡はいたってのんびり秋の日和。スズムシがチリンチリンと鳴き、道端の草むらではバッタがピョンと跳ねる。ニュースを見ながら「関東は大変やなあ」と言いながら、こちらは「おでんにするか、それともサンマにするか」と呑気な食卓の心配をしている。まあ九州人というのは、台風が直撃しない限り、基本的に楽天的である。

 そんな折、一本の電話。骨董買取の依頼である。場所は福岡市内といえど、少し山間部に近い住宅街。電話口の声は落ち着いた女性で、「主人が集めていたものが、押し入れにたくさんありまして」とのこと。こういう場合、十中八九「古新聞と虫食い掛軸と割れた壺」が出てくるのだが、こちらとしては「もしかして桃山茶陶の大発見か?」という淡い期待も捨てきれぬ。結局、骨董屋とは博打打ちに近い生き物である。

 車を走らせること四十分。目的地に到着すると、そこは閑静な住宅街。周りはモミジや柿の木がちらほら見える。門構えからして品がある。ピンポーンと鳴らすと、奥様が出迎えてくださった。これがまた、気品あふれる方で、どこか「宝塚の娘役の晩年」といった雰囲気。私は思わず背筋を伸ばした。

 リビングに通されると、紅茶が運ばれてくる。骨董屋としては茶道具で一服…を期待したが、今回は洋風である。カップを見れば英国ウェッジウッド。さすがは奥様、センスが良い。ひと口含むと香りがふわっと広がり、「ああ、私が40才ほど若くてしかも仕事じゃなくて婚活だったら、話は早いのに」とくだらぬ妄想をしてしまう。

 奥様はゆっくりと、ご主人の思い出話を語り始めた。戦後まもなく、福岡市内で会社を興したご主人は、事あるごとに骨董屋に入り浸り、あれやこれやと買い集めたという。しかもその骨董屋、今はもう存在しない。昭和の街並みから姿を消した、あの「煤けた木造の小店」だ。店番のおやじは大抵、白いシャツの襟を黄ばんだままにしていて、客が来ても新聞から顔を上げない。だが、押し入れの奥から不意に「ほれ、これは江戸のもんやぞ」と壺を出してきたりする。その怪しさこそ骨董屋の醍醐味であった。

 ご主人はそういう場所が大好きだったらしく、焼物、掛軸、ブロンズ像、木彫仏、日本画…と節操なく買い求めたらしい。家族としては迷惑千万だが、こちらとしては「実にありがたいご趣味です」と手を合わせたくなる。

 話は尽きないが、こちらも夕方までお茶を飲んでいるわけにはいかぬ。いざ、押し入れを開けることにした。襖をスーッと引くと、そこから出てきたのは宝の山。いや、正確には「宝かもしれない山」。

 まずは古伊万里。青花の皿に金襴手。少し縁が欠けているものもあるが、江戸後期の味わいがある。続いて九谷焼。色絵の鮮やかさがまだ残っている。おお、これは珍しい。さらに煎茶道具。朱泥の急須、中国茶器も混ざっている。手に取ると、時代の匂いが指にまとわりつくようだ。

 奥からは銀や錫の茶壷がゴロリと出てきた。しかも保存状態が良い。茶葉の香りがほのかに残るようで、思わず鼻を近づけてしまった。いや、決して変な骨董趣味ではない。

 絵画や掛軸も続々。山水図に花鳥画、人物画。中には「これは美人画か…いや、ただの福笑いか?」と迷うような代物もあった。骨董というのは時に、作者の名前よりも見る側の忍耐力が試される。

 そして、極めつけは尺八。しかも都山流。ほとんど使用されていない。試しに吹いてみようかと思ったが、下手に音を出したら奥様に追い出される危険があるので断念した。

 全部でおよそ七十点。査定の結果、全体に程度は良く、保存状態も上々。奥様に提示すると、驚いたように目を丸くされ、「主人も草葉の陰で喜んでおります」と仰る。その言葉に、こちらもホッとした。骨董屋にとって一番怖いのは「そんな値段なら売らん!」と一喝されることだからである。

 こうして今回の買取劇場も、無事に幕を閉じた。紅茶の余韻と、押し入れの古い匂いを胸に残しながら、私は帰路についた。車窓から見える夕暮れの山並みが、なんとなく尺八の音色に聞こえるような気がした。

 福岡の秋はのんびりしている。だが、その押し入れの奥には、時折、戦後の骨董屋の記憶がひょっこり顔を出す。骨董屋稼業とは、そんな記憶のかけらを拾い集める旅なのかもしれない。

この尺八については下記で詳しくお話しておりますので最後までお付き合いください。宜しくお願い致します。

買取品の詳細

共箱付きです/骨董の買取
共箱付きです

◇この「胡蝶」尺八は未使用のもので状態も良いものです。竹の色合いや使用している部分も大変美しいものでした。

買取査定額

竹の艶もあり良いものです/骨董品・福岡
竹の艶もあり良いものです

 

◆尺八の買取査定額もしくは評価額ですがまず第一に作家、次に作りと状態、付属品の有無などでより高価買取&できます。なお、今回買取した尺八は特に作家名はなく「胡蝶」という作品の尺八で状態もよく、しかも付属品や元箱なども揃っているということで高価買取させていただきました。

 

■過去の作品買取例

古竹の味のある部分を使用していますね/骨董買取・福岡
古竹の味のある部分を使用していますね

永廣真山 三印 (眞山) 700,000円
永廣真山 三印 金巻 金三線 金縁唄口    500,000円
真山銘 尺八 真翁作 中継金一線・歌口 金巻 内朱塗 150,000円
玉水銘 都山流 尺八 金巻歌口 籐巻金一線100,000円 他多数

◇「胡蝶」について…

 

★「胡蝶」についてあまり正確な情報はありませんがわかる範囲で書きます。

  • 「胡蝶宝(こちょうほう)」というブランド・銘で、木製尺八・合竹(あいちく:複数の竹や竹と材料を組み合せて製作されたもの)尺八が、都山流スタイルで販売されている例があります。サイズは一尺六寸、一尺八寸など。初級・普及用・初心者向けのモデルも含まれる。

  • 例えば、ワダ楽器など和楽器店で「胡蝶宝尺八 合竹 都山流 一尺八寸」などの商品が「ワンランク上の初心者用」の定番として紹介されている例。

  • 材質:真竹が主、あるいは合竹や木製・楓材などの素材のものもある。真竹製の銘管は本格的、音色や響きの面で良い評価をされる。

  • 長さ・管の寸法:多数は一尺八寸管(標準管)など。その他、一尺六寸などの比較的オーソドックスな長さのものもある。

  • 音色・響き:力強さ、美しさ、豊かな響き、あるいは柔らかく繊細なものなど、製作者あるいは管の個体によって幅がある、という評価。銘「胡蝶」が付くものは比較的音の鳴りや響きが良いとされることが多い。


◆都山流尺八の背景(流派としての歴史)

まず前提として、都山流尺八の歴史を簡単に押さえておきます。これが「胡蝶」銘の尺八を理解するうえでの文脈になります。

  • 都山流(とざんりゅう)は、明治29年(1896年)2月15日に、初代 中尾都山(本名・琳三/りんぞう、1876‐1956)が「尺八指南竹琳軒」を大阪市天満で開き、教えることを始めたことをもって創立されます。

  • 中尾都山は虚無僧による尺八演奏の宗教的・修行的側面から、古典本曲などを伝承しつつ、新しい本曲(都山流本曲)を創作し、合奏、三曲(箏・三絃・尺八)の合奏、楽譜出版制度、試験制度などを整備したことで、尺八を新たな音楽的・芸術的な方向へ押し出しました。

  • 流派組織の整備や師範・教授者の育成も早くから行われ、都山流は現在も尺八流派として最大規模を誇っています。

このような流れがあるので、「銘」「作者」がしっかり付されて流通する尺八(特に「銘」を持つもの)は、演奏者・製作者の名前やスタイルが比較的重視されてきたものと思われます。

◎関連、参考サイト

 

  • 浜松市楽器博物館(Hamamatsu Museum of Musical Instruments)

    • 静岡県浜松市。日本の楽器を中心に、世界の楽器を含め約1,500点の展示があります。尺八や虚無僧尺八など、日本の伝統的な管楽器の名器・古管尺八(地無し尺八など)の展示が含まれています。

    • 常設展で「日本の楽器」というコーナーがあり、江戸時代の虚無僧尺八の形態をとどめる貴重な地無し尺八など、古い尺八をじかに見ることができます。

  • 尺八Web博物館(Shakuhachi Web Museum)

    • 大阪に拠点を持つ、志村哲(禅保)らによるプロジェクトで、ウェブ上で尺八・名管・歴史的資料を紹介する博物館/デジタル展示のような性格を持っています。実物展示ではなく写真・3Dモデルなどを用いた紹介が中心です。展示場所という意味ではオンライン博物館です。

  • 国立歴史民俗博物館(The National Museum of Japanese History / Rekihaku)

    • 常設・特別展を含めて、日本の民俗文化・歴史と関わる楽器(能楽の鼓胴など)を展示しています。尺八が主として展示されているという情報は限定的ですが、関連する楽器文化資料との関連で展示される機会があります。

 

 

 

■その他の買取品目

 

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