福岡市城南区で柿右衛門濁手蓼文花瓶を買取りました!

ある晴れた日の午後、福岡市の閑静な住宅街で、静かなる骨董品鑑定が幕を開けました。依頼主のご主人は、佐賀は有田の窯元を渡り購入して歩いたお父様が生前収集したという珠玉の品々を抱えておられるとのこと。家に足を踏み入れると、そこにはなにやら高貴な「東洋陶磁美術館」が広がっており、まるで小さな陶芸の王国でございました。さて、ご主人の案内で品々が並ぶ一室へ入ると、まず目に飛び込んできたのは中国明時代のやきものから、李朝の陶器に至るまでの歴史的なラインナップ。そして何より目を引くのは、ここ福岡でも名を馳せる柿右衛門の作品群が、誇らしげに並んでいることです。そこに漂う静けさと重みは、「厳かに真剣に拝見せよ!」という声なき声を放っているかのようでした。

すべての宝物を手放すつもりはなく、今回は部屋に入りきらなくなった大きめの品を何点か売却されたいとのこと。いざ拝見させていただくと、玄関先に控えていたのは、堂々たる伊万里の大きな沈香壷と、見事な韓国の花瓶。どれも由緒ある逸品で、こちらも息を飲むばかりです。

しばしの品評会が終わり、いよいよお値段の話に。何となく冷や汗をかきつつ、「ちなみにお父様がご購入されたお値段は…?」と伺うと、仰天の高価格が返ってきました。思わず「はて、それは一体どのようなルートで…?」と問いたくなりますが、ここは冷静な顔で黙々と査定を進めるのがプロの心得。「これもお仕事」と自分に言い聞かせ、今の相場と需要を考慮して、精一杯の金額を提示しました。ところが、一通りの鑑定が終わってホッと一息ついたその矢先、ご主人が何やら奥から「秘密兵器」を取り出してくるではありませんか。その風格ある大きな箱を見た瞬間、「これは、ただならぬ代物に違いない」と勘が働きます。恐る恐る蓋を開けると…そこには、佐賀県が誇る名工、酒井田柿右衛門の見事な濁手の大花瓶が鎮座していたのです。

「これは……!」と思わず声が漏れるも、あまりの気品に言葉を失う私。確かに多少の汚れは見受けられるものの、それでも国宝に認定された芸術品の輝きは曇ることがありません。乳白がかった見事な濁手の肌に、淡い蓼文の模様が清々しく、何とも言えぬ品格が漂っています。こうしてこの場に鎮座する姿はまるで「わが生涯に一片の悔いなし!」とでも語っているかのようです。

気持ちを落ち着け、改めて査定を開始。心の中で礼を尽くしつつも、価格の提示は冷静に。ご主人も深く頷き、「よかろう」と一言。「ありがとうございます!」と心で大きく叫びながら、この貴重な作品を有難く受け取ったのでありました。

さて、今日のこの鑑定、最初から最後まで驚きの連続でございました。東洋陶磁美術館さながらの品々を拝見し、名工の濁手に息を呑む。まるで陶器のミュージカル、いや、ここだけの陶磁ワールドツアーを体験したような一日。持ち帰った大花瓶を店に飾るやいなや、ふと心に芽生えた一言は「いつの日か、またこの方にお会いできますように…」と。その後、お店に持ち帰り、しばし眺め入っておりましたが、あの濁手の淡い輝きは、これからも私の心に残り続けるに違いありません。

◇この柿右衛門濁手ついては下記で詳しくお話しておりますので最後までお付き合いください。宜しくお願い致します。

買取品の詳細

◇この「柿右衛門の花瓶」は状態は時代の割によく、ひび割れやニュウ、擦り傷などは見受けられません。共箱もありますが古い為、シミや汚れがありました。大きさは約50cmの大型の花入れでした。形は口元がやや広がっており独特な形状の存在感のある作品でした。作品名は「濁手蓼文花瓶」です。ありがとうございました。

 

買取査定額

◇柿右衛門濁手の買取査定額もしくは評価額ですがまず第一に作品の人気度と時代、色合いや形状、ほかには付属品のしおりや布、共箱があればより高価買取&できます。なお、今回の柿右衛門は濁手といった特別の作品で状態も良かったので高価買取価格になりました。

柿右衛門作品の買取相場ですが上記のように作品や状態等などでかなり差があります。ご自宅に柿右衛門作品が御座いましたら一度拝見させてください。状態や時代、作品でもお値段は変わりますのでご了承ください。

 

■過去の作品買取例


十四代酒井田柿右衛門濁手紫露草文花瓶 700,000円
十四代酒井田柿右衛門 『濁手紅葉文花瓶』 600,000円
十四代酒井田柿右衛門 『濁手梅花文沈香壷』500,000円
十四代柿右衛門 濁手麦文瓶                         250,000円 他多数

柿右衛門の濁手とは?

 

◇柿右衛門作品の「濁手(にごしで)」は、江戸時代に発展した特別な陶磁器技法で、柿右衛門の代表的な作風のひとつです。その歴史や焼物としての地位、一般の柿右衛門作品との違いについて、詳しく説明します。

濁手の誕生と背景

濁手は、江戸時代中期の元禄期(17世紀後半〜18世紀初頭)に登場しました。柿右衛門の作品が日本国内だけでなく、ヨーロッパでも高く評価され始めた頃に発展した技法です。当時、オランダ東インド会社を通じて輸出され、特にヨーロッパの上流階級に愛されていました。そのため、濁手は輸出向けの作品としても多く作られ、陶磁器文化の発展に大きく貢献しました。

濁手の技法は、特に美しい「乳白色」の地肌を特徴とします。この地肌は、通常の白磁と比べて柔らかな白さと、独特の暖かみを持ち、まるで乳がかったような半透明の色合いを示します。これにより、絵付けの赤や青、緑などの色彩が鮮やかに映え、華やかな印象を与えます。この濁手の技法を生み出したのは、初代酒井田柿右衛門とされており、これによって柿右衛門様式が確立されました。

濁手と一般的な柿右衛門作品の違い

一般的な柿右衛門作品と濁手の最大の違いは、まずその地肌の色です。一般の柿右衛門作品では、白磁に近い純白の地肌が使用されるのに対し、濁手はその乳白色が特徴で、光を透過するような柔らかな質感を持っています。この質感を実現するために、特殊な配合の土と釉薬が使用されましたが、この配合は極めて難しい技術とされ、柿右衛門家にしか製造できないものでした。今回、買取した濁手花瓶も例にもれず柔らかな素肌と繊細な色彩が特徴の逸品でした。

また、濁手の作品では絵付けの配色やデザインにも独自の特徴があります。特に「柿右衛門赤」と呼ばれる濃い赤色が、濁手の乳白色の地肌に鮮やかに映え、生命力を感じさせます。この赤色の発色を確実に出すためには、温度管理や焼成時間にも細心の注意が払われました。さらに、緑、青、黒などの色も繊細に組み合わせており、主題となる動植物のモチーフが力強く描かれています。これにより、濁手の作品は日本美術としての存在感だけでなく、ヨーロッパ市場での高い芸術的価値を持つこととなりました。

濁手の歴史的意義と評価

濁手は日本陶磁器の歴史において独特の地位を占めています。江戸時代から明治時代にかけて、日本の陶磁器は海外市場で人気を博し、特に濁手のような高度な技法を伴う作品は、他国にはない魅力として評価されました。ヨーロッパにおいては、濁手の作品は中国陶磁器と並び高く評価され、一部のコレクターには「日本の宝石」とも称されました。このような背景から、濁手はただの工芸品に留まらず、美術品としての価値も高く、現代に至るまで日本国内外の美術館やコレクターの手に多く所蔵されています。

また、濁手の復興には多くの困難が伴いました。明治時代には、化学的な分析や伝統的な技術を復元する努力が行われ、今日では十四代酒井田柿右衛門がその伝統を引き継いでいます。現代においても、この乳白色の美しい地肌は高い評価を受け、柿右衛門窯の象徴として愛されています。

濁手は、柿右衛門作品における特別な技法であり、江戸時代から日本陶磁器の重要な位置を占めています。乳白色の柔らかな地肌と、鮮やかな赤や緑、青の絵付けが調和したその美しさは、柿右衛門ならではのものです。また、濁手はその歴史的背景からも、日本美術の粋を集めた芸術品として、日本国内外で高い評価を受け続けています。

★代表作品5選

柿右衛門濁手の代表作品は、日本国内外の美術館や博物館に収蔵されています。ここでは、特に有名な5つの作品とそれぞれが収蔵されている施設をご紹介します。

  1. 色絵濁手藤花文瓶 
    • 収蔵先:東京国立博物館(日本)
    • 概要:藤の花が描かれたこの作品は、濁手の柔らかい乳白色の地肌に、鮮やかな藤の花が美しく表現されています。濁手独特の質感と、華やかな花のデザインが特徴で、日本美術の繊細な技術を感じさせる作品です。
  2. 色絵濁手花鳥文八角皿 
    • 収蔵先:サントリー美術館(日本)
    • 概要:八角形の皿に、花や鳥が描かれたデザインで、濁手の代表的な意匠が取り入れられています。花鳥文の繊細な絵付けが濁手の乳白色に映え、雅やかさと品格を備えた作品です。
  3. 色絵濁手椿文皿 
    • 収蔵先:大英博物館(イギリス)
    • 概要:椿の花が描かれたこの皿は、17世紀に輸出され、当時のヨーロッパで人気を博した濁手の代表作の一つです。大英博物館には、日本美術の重要な陶磁器が多く収蔵されており、濁手作品もその一環として展示されています。
  4. 色絵濁手牡丹文壺 
    • 収蔵先:メトロポリタン美術館(アメリカ)
    • 概要:牡丹が描かれた壺で、濁手の美しさを強調したデザインが特徴です。乳白色の地肌に鮮やかな牡丹の赤が映えることで、日本美術の優雅さと大胆さを併せ持った作品となっています。
  5. 色絵濁手松竹梅文皿 
    • 収蔵先:九州国立博物館(日本)
    • 概要:日本の伝統的な吉祥文様である松竹梅が描かれた皿で、濁手の繊細な乳白色の地肌が、吉祥を象徴するモチーフと調和しています。九州国立博物館は柿右衛門をはじめとする有田焼の作品に注力しており、濁手の収蔵も充実しています。

◎関連、参考サイト

九州国立博物館

メトロポリタン美術館

東京国立博物館

 

■その他の買取品目

 

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