福岡市南区で水月焼を買取りました!

◇骨董品買取の福岡玄燈舎です。
春の風がそろそろ本気を出し始める三月中旬。桜のつぼみもふくらみ始め、花見の準備を考える余裕があってもいい頃なのだが、こちらはそうもいかない。なにせ月末の売り上げ締め切りが待ったなしなのだ。春の陽気に誘われて浮かれる余裕など皆無、今日も今日とて骨董品の買取査定に奔走するのであった。
そんな折、依頼が舞い込んだのは福岡市南区の昭和風情漂う一軒家。ご両親が亡くなって早三年、ご子息は関東に住んでいるため、空き家のまま放置されていたとのこと。こういう家というのは、時に思わぬお宝が眠っているもの。期待に胸を膨らませながら訪問した。
玄関を開けると、長年の空白期間を物語るかのような静けさと、ほのかに漂う木の香り。案内されるままに家の中へ入ると、そこには時が止まったかのような光景が広がっていた。家具の配置もそのまま、カレンダーも三年前のままピタリと止まっている。「昭和レトロ」と言えば聞こえはいいが、どこか切なさが胸を打つ。
一部屋ずつ丁寧に査定を進めていくが、どうやら故人は古美術や骨董に特別な興味はなかった様子。時代を感じる掛軸が数本、茶道具が少々、鉄瓶が一つ、勲章がいくつかと、ラインナップとしては控えめなものだった。家主に査定結果を伝え、無事に買取成立。
しかしここで終わらないのが、われわれプロの査定人である。「最後に念のため」と、飾り棚の奥へ手を伸ばしてみた。すると、暗がりの向こうに何やら怪しげな影が見えるではないか。「ん?カニ?」…
思わず二度見する。そこには数匹のカニが身を潜めている。しかし、よくよく見ると動かない。さすがに空き家の棚に本物のカニがいるはずもない。恐る恐る手に取ると、どうやらこれは陶器のようだ。しかも、ただの陶器ではない。茶器や湯呑に精巧に彫り込まれたカニたち。これは、幻の窯と言われる水月焼ではないか!
水月焼といえば、明治から昭和初期にかけて作られた名陶で、繊細な彫刻が特徴。しかし、現在ではほぼ生産されておらず、市場では滅多にお目にかかれない逸品である。「やっと見つけてもらえたか…」そう言わんばかりに、カニさんたちは日差しを浴びてしみじみと輝いていた。ひとつひとつのカニの表情が実に豊かで、まるで生きているかのようだ。
私はこの発見に興奮しつつ、慎重に査定を行った。当然のことながら、これは高額査定となる。家主に説明すると、驚きと喜びが入り混じった表情を浮かべ、「そんなものが家にあったとは…」と感慨深げに話された。結果として、今回の骨董買取は双方にとって満足のいくものとなった。
帰り際、ふと棚を振り返ると、そこに残った空間が何となく寂しそうに見えた。長らく眠っていた水月焼のカニたちが、新たな持ち主のもとで再び陽の目を見ることを願いながら、私はそっと家を後にした。さて、次はどんな「お宝」と出会えるのやら。

この水月焼については下記で詳しくお話しておりますので最後までお付き合いください。宜しくお願い致します。
買取品の詳細
◇この「水月焼」はとてもよくできており、特に蟹の彫刻が有名です。今回の買取品も例外ではなく一つひとつの蟹の表情や色合いにも違いがありずっと見ても飽きない器です。訳40年ほど前の焼物なのでさすがに小さな傷や欠けもありましたがそんなダメージにも負けないくらい存在感がありました。ありがとうございました。

良く欠けが見かける焼物ですが今回はほとんどが完品で残っていました。しかしながら蟹は立体的で今にも動き出しそうな彫刻ですね。
買取査定額

◆水月焼の買取査定額もしくは評価額ですがまず製作年代、次に状態、銘の有無や付属品の有無などでより高価買取ができます。なお、今回買取した水月焼の酒器や茶器は傷も少なく色剥げなども少ないことで高価買取させていただきました。大尚、ご自宅や倉庫に水月焼や茶器、酒器などありましたら是非、骨董品買取の福岡玄燈舎にお声掛け下さい。宜しくお願い致します。
■過去の作品買取例
初代水月焼 酒器セット 箱付 300,000円
水月焼 特大鮑型蟹の大鉢 200,000円
提梁式茶壺 水月焼 天神蟹彫 箱付き 170,000円
水月焼 古作 天神蟹彫煎茶器揃 二連蟹150,000円 他多数
◇水月焼とは…

水月焼の歴史と特徴
水月焼(すいげつやき)は、愛媛県で生まれた陶磁器であり、その最大の特徴は蟹の彫刻を施した独特の意匠にあります。同じく蟹をモチーフとした二六焼や玉井楽山と並び、日本の陶芸史において異彩を放つ存在です。水月焼は、江戸時代末期から明治期にかけて発展し、精緻な装飾と芸術性の高さで知られています。
創始と歴代の陶工
水月焼の起源は江戸時代後期にさかのぼります。初代の陶工については諸説ありますが、伊予地方の陶工たちによって始められたとされます。特に、幕末から明治初期にかけての水月焼は、高度な技術と独特の意匠で注目を集めました。
初代
水月焼の創始者は、京都の楽焼や伊万里焼の影響を受けつつ、独自の陶法を確立したとされます。とくに、陶器の表面に浮き彫りのように蟹をあしらう技法が特徴的でした。これは、愛媛県沿岸部の豊かな海産物と深く結びついており、当時の庶民にも親しみを持たれました。
明治期の発展
明治時代には、二代目、三代目と技術が受け継がれ、さらに高度な造形技術が生み出されました。特に、写実的な蟹の表現は、陶工たちの技術の高さを示すものとなりました。
大正・昭和期
この時代になると、陶磁器の需要が変化し、大量生産が求められるようになります。水月焼も例外ではなく、一部は観光客向けの土産品として簡略化された作品も生み出されましたが、伝統技術を守る陶工もいました。
水月焼の特徴
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蟹の装飾
- もっとも特徴的なのが、陶器に施された蟹の彫刻です。
- 立体的な蟹が器の縁や側面に張り付くように表現されており、写実的な作風が魅力です。
- 爪や甲羅の細部まで丁寧に作り込まれ、まるで本物の蟹が器にしがみついているかのようなリアルさがあります。
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釉薬の美しさ
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伝統技法の継承
- 水月焼は手作業による成形が基本であり、機械による大量生産とは一線を画しています。
- 蟹の形を整える際には、熟練の技術が必要とされ、一つひとつが微妙に異なる個体となります。
代表作品
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水月焼の蟹付き茶碗
- 茶碗の側面に蟹が張り付いているように造形されており、持ち上げると指先にリアルな蟹の足の感触が伝わる作品。
- 青釉を施し、波間に浮かぶ蟹を表現したものが人気。
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蟹装飾の酒器セット
- 徳利とぐい呑みの組み合わせで、特に酒席で話題を呼ぶ逸品。
- 酒を注ぐたびに、蟹がまるで動き出すかのような視覚的効果がある。
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水月焼の香炉
- 香炉の蓋や側面に蟹の装飾を施した作品。
- 香煙が蟹の隙間から漏れ出し、幻想的な雰囲気を演出する。
現代における水月焼の評価
現在、水月焼は骨董市場でも評価が高く、特に明治・大正期の作品は希少価値がついています。美術館や個人コレクターの間でも人気があり、近年では再評価が進んでいます。愛媛県内の郷土資料館や工芸館などでは、一部の作品が展示されており、その歴史や技術を学ぶことができます。また、近年の陶芸家の中には水月焼の技法を受け継ぎ、新しい表現を取り入れた作品を生み出す動きも見られます。伝統の技術を守りながらも、現代の感覚に合わせたデザインが模索されているのです。
★玉井楽山について…
1. 玉井楽山の歴史と背景
玉井楽山の陶芸は、愛媛県松山市で発展しました。その特徴的なスタイルは、中国陶磁の影響を受けつつも、日本の土と技術を活かした独自の発展を遂げています。玉井家は代々陶芸を営み、松山の地で楽山焼(楽山窯)を継承してきました。
「楽山焼」の名は、初代が京都の楽焼の影響を受けつつ、独自の作風を築いたことに由来するとされます。その後、二代目・三代目へと技法が受け継がれ、楽山焼は発展を続けました。
2. 作品の特徴
① 蟹の彫刻
玉井楽山の作品における最大の特徴は、立体的に彫り出された蟹の装飾です。リアルな質感や躍動感のある造形が魅力で、甲羅や脚の細部まで細かく作り込まれています。これは、潮の流れが激しい地で育つ蟹の力強さを表現したものであり、生命力の象徴としても捉えられています。
② 釉薬の工夫
楽山焼では、さまざまな釉薬(ゆうやく)を使い分け、蟹のリアルな質感を演出しています。代表的なものには以下のような種類があります。
- 鉄釉(てつゆう): 黒や焦げ茶色の光沢を持ち、重厚な仕上がり
- 青釉(せいゆう): 深みのある青色を呈し、海のイメージを演出
- 飴釉(あめゆう): 黄褐色で温かみのある色合いを持つ
③ 力強い造形
茶器や壺、鉢、香炉など、多様な作品が存在しますが、どれも力強く重量感のあるフォルムが特徴です。特に蟹の装飾が施された急須や茶碗は、実用性と芸術性を兼ね備えた逸品として人気があります。
3. 歴代の玉井楽山
楽山焼は代々の陶工によって受け継がれており、「玉井楽山」という名は、歴代の当主が襲名してきました。特に以下の代が知られています。
初代 玉井楽山
- 京都の陶芸技術を学び、松山にて楽山焼を創始。
- 京都の楽焼と伊予の土を融合させた独自の作風を確立。
二代目 玉井楽山
- 初代の技法を継承しつつ、釉薬の改良を進めた。
- 蟹の装飾技術を発展させ、立体感のある表現を確立。
三代目 玉井楽山
- 現在も活動を続けている可能性がある。
- 伝統を守りつつ、現代的なアレンジを取り入れた作品も制作。
4. 代表作品
玉井楽山の代表作には、以下のようなものがあります。
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蟹彫刻付きの急須
- 取っ手や胴部分に精巧な蟹が施された作品。茶器としての機能と装飾性を兼ね備える。
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蟹の香炉
- 甲羅の部分が蓋になっている香炉。蟹がまるで本物のように佇む。
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蟹の酒器
- ぐい呑みや徳利に蟹が彫られ、持ち手にも立体的な装飾がある。
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蟹の茶碗
- 口縁や胴に蟹が這うように配置され、独特の趣を持つ。
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壺や花瓶
- 全体に蟹が装飾された大ぶりの作品。コレクターに人気。
これらの作品は、骨董市場やオークションでも人気が高く、特に保存状態の良いものは高値で取引されることが多いです。
◎関連、参考サイト
. 松山城下 楽山焼 窯元(愛媛県松山市)
愛媛県松山市玉谷町にある楽山焼の窯元では、三代目玉井楽山の作品を展示しています。
激流に住む蟹をモチーフにした力強く表情豊かな楽山焼の作品を直接鑑賞することができます。一つひとつ手作業で細かく彫刻され、色づけされた作品は必見です。
. 愛媛県美術館(愛媛県松山市)
愛媛県美術館は、地域の伝統工芸品や美術作品を幅広く収蔵・展示しています。楽山焼や水月焼に関する特別展や企画展が開催されることがありますので、最新の展示情報を確認されることをおすすめします。
. 愛媛県歴史文化博物館(愛媛県西予市)
愛媛県歴史文化博物館は、愛媛の歴史や文化を紹介する博物館です。水月焼や楽山焼に関する展示が行われることがありますので、最新の展示情報をチェックされることをおすすめします。
■その他の買取品目
★骨董品買取の福岡玄燈舎では古美術品の他、アンティークや掛軸、茶道具、書道具、絵画、仏像、勲章、中国陶磁、甲冑など多彩な骨董品を査定買取しております。お見積りだけでも構いませんのでお気軽にご相談ください。