福岡市中央区で「錫半」の茶筒を買取りました!

錫半の茶筒買取りました/茶道具の買取は福岡玄燈舎
錫半の茶筒買取りました

◇福岡はいつの間にやら秋めいて、エアコンのリモコンも机の隅っこで埃をかぶっている。つい先日まで「今日は冷房? 除湿? いやいや送風で節約だ!」とリモコン片手に右往左往していたのが、今ではすっかり肩透かし。自然の風が無料で部屋を撫でてくれるのだからありがたい。もっとも、その風が帳簿の上に積もる赤字を飛ばしてくれるわけではないのが骨董商の悲しい現実である。

そんな昼下がり、一本の電話が鳴った。
「叔母の集めた茶器や骨董、アンティークが山のようにあって困っている。買取ってほしい」

――ほら来た。こういうときにこそ、我々、いや、正直者を絵に描いたような? いや正直すぎて商売にはやや不向きな? そう、私のような骨董屋が存在する理由があるのだ。

受話器を置くやいなや、相方に向かって高らかに宣言する。
「福岡市のビンテージなマンションにお宝あり! 出動だ!」

ビンテージマンションと聞いてピンとこない方もおられるだろう。要は築年数がだいぶ経っているのに、なぜか「ビンテージ」と称することで古さを美徳に変えてしまう魔法の言葉である。木造住宅なら単なる“古びたアパート”扱いなのに、鉄筋とコンクリでできていると急に“ビンテージ”へと昇格する。世の中、不公平である。

ともあれ、マンションの一室に到着。ドアを開けた瞬間、私の目に飛び込んできたのは――物、物、物。まるで津波の後に浜辺へ打ち上げられた漂流物の山。どこから手をつけていいか皆目わからない。

「ああ、そうだった」私は心の中でうなずく。
昔の人々は「もったいない」の精神を信仰のごとく抱きしめていた。空箱や包装紙までもが「いつか使えるかもしれない」と押し入れの奥に詰め込まれる。結果、押し入れは魔窟となり、いざ整理となると子孫は阿鼻叫喚。私たち骨董屋が出動するのも必然の理である。

相方と相談し、まずは“宝が眠っていそうな押し入れ”と“見栄えする飾り棚”から攻めることにした。床の上に散乱した古雑誌や健康器具(なぜか骨董品査定先には必ず古びた健康器具があるのだ)をかき分け、引き戸を開ければダンボールの山、さらに奥には新聞紙にぐるぐる巻きにされた得体の知れぬ物体。これを一つひとつ紐解いていく作業は、さながら考古学者が砂漠で遺跡を発掘するようなものだ。ただしこちらは砂ではなく、ホコリとカビ臭が肺を直撃する。マスクをしてこなかったことを激しく後悔するが後の祭り。

発掘作業は延々と続く。
「これは何だ?」
「さぁ……茶碗のカケラ? いや、灰皿か?」
「おおっ、これは掛軸か!」
「いやいや、スーパーの包装紙を丸めただけじゃないか」

まるで宝探しとゴミ分別のチャンポン作業。だが、骨董屋稼業とはかくも地味で泥臭いものなのだ。派手なドラマでよくあるように、「一目見てこれは室町時代!」と叫ぶシーンなど、実際には滅多にない。大抵は「これはリサイクル行きかな?」とゴミ袋を開け閉めする方が圧倒的に多い。

そうこうして約四時間。汗だくとホコリまみれの格闘の末、ようやく“収穫”が三十品ほど姿を現した。
掛軸が数本、ブロンズの仏像が数点。アンティークのおもちゃ、ちょいと気取ったコーヒーカップ。どれも「おおっ!」と叫ぶにはやや力不足だが、それでも“ゼロ”でないだけ御の字である。

松の図柄が美しいですね/骨董品の買取は福岡玄燈舎
松の図柄が美しいですね

極めつけは「錫半」の未使用茶筒。これを発見した瞬間、私と相方の目が同時に輝いた。もっとも依頼者のご婦人は「そんなもの?」といった顔である。骨董屋が興奮するポイントと、持ち主が大事にするポイントは大抵すれ違うものだ。

もちろん、押し入れ全てを開けられたわけではない。まだまだ奥に眠る可能性はある。だが人間には体力と時間の限界というものがある。全開放を試みればこちらが過労で骨董になるやもしれぬ。そこで「まだまだ眠っているかもしれませんが、今回はこの辺りで」と正直に伝えると、依頼者は「ああ、そうね」と半ばあきらめながらも納得された。

査定額を伝えると、意外にもスムーズに首を縦に振ってくださった。こちらとしては「もうちょっと粘られるかな」と覚悟していたのだが、あっけなく買取成立。無事? 任務完了である。

帰り際、相方がぽつりと言った。
「しかし……まだまだあの押し入れの奥に眠ってるかもしれないですね」
「うむ」私は大きくうなずく。
「だが、それを掘り起こすのはまた別の誰か、あるいは未来の私たちだろう。骨董品買取の稼業とは、すべてを掘り尽くすより“謎を残す”方が物語としては面白いのだ」

――と、妙に格好をつけて言ってみたものの、本音は「疲れた、もう無理」である。骨董屋という生き物は、体力の衰えをロマンでごまかすのが得意技なのだ。

それにしても、福岡の秋風はやけに優しい。ホコリまみれで汗だくになった身にとって、帰り道の風はまるで神仏の加護である。財布の中には査定成立の証たる契約書、車の後部座席には仏像や茶筒。今日もまた、骨董屋らしい骨董屋?の日が暮れてゆく。

この茶筒については下記で詳しくお話しておりますので最後までお付き合いください。宜しくお願い致します。

買取品の詳細

未使用でとても状態の良い錫器です/錫の買取は福岡玄燈舎品
未使用でとても状態の良い錫器です

◇この「尺八」は竹でできておりますが煤竹風の外観になっており状態もとてもよく、古い尺八によくみられるひび割れや口元の割れなどは見受けられません

 

買取査定額

◇錫の茶筒の買取査定額もしくは評価額ですがまず第一に作者や工房の知名度、次に意匠やデザイン、ほかには刻印や時代があればより高価買取&できます。懇意あの錫半の茶筒は古くありませんが未使用品で極美品でしたので高価買取させて戴飽きました。ありがとうございました

ご自宅に錫製品や茶道具が御座いましたら一度拝見させてください。状態や時代、作者、作品でもお値段は変わりますのでご了承ください。

 

■過去の作品買取例

蓋の彫刻も細かく綺麗な茶入れです/骨董品の買取は福岡玄燈舎品
蓋の彫刻も細かく綺麗な茶入れです

錫製壹斤入茶壺 錫屋半兵衛作   250,000円
錫半 鉄瓶  東宮殿下御結婚記念品 150,000円
盆附茶器 大阪浪華錫半造 中村半兵衛  50,000円
古錫 大茶壷 錫半製  40,000円 他多数

「錫半」とは?

「本錫 錫半」の刻印あります/骨董の買取は福岡玄燈舎
「本錫 錫半」の刻印あります

「錫半(すずはん)」は、日本の錫器(すずき)文化の中で名の知られた屋号・工房名の一つで、特に茶器や酒器などの生活用具を中心に手仕事で製作された錫製品を多く残しています。錫器は飲料の味を良くするといった民間伝承や茶道具としての実用性から長く需要があり、錫半もそうした用途に向けた高品質な製品を制作してきたことで知られています。現存する錫半銘の器物は骨董市場でも流通しており、底面に「錫半」「本錫」などの刻印があるものが確認されています。

歴史(系譜と変遷)

錫器の製造は江戸期以降に各地に広がりましたが、近代以降、大阪を始めとする産地に工房や小規模工場が集積しました。錫半については、明治~大正期にかけての創業や発展を示唆する記録・器物があり、個人名(例:中村半兵衛=錫屋半兵衛)を錫半の作銘として刻む例も残っています。戦前には生産拡大のために工場を設けるなどの動きがあり、昭和期には一時、満州(当時の中国東北部)に製造拠点を持って事業を展開していた事実を示す近代史料もあります。戦後の混乱期を経て、錫の製造形態は工房規模の手仕事中心へと戻る一方で、戦前の工場的展開を経験した業者は、戦後は製造から販路や取次ぎへと機能を変えた例があり、錫半もそのような系譜の中に位置づけられています(大正~昭和の工場閉鎖や満州工場設置の経緯などを伝える文献あり)。

代表的な人物・職人・受賞歴

錫半は単独の個人名だけでなく、工房における職人・作家たちの名が挙がる場合があり、工房から独立した職人や工房出身の作家が各地で活躍する例が見られます。たとえば、昭和~現代にかけて錫半に入社し、その後の工芸活動で受賞歴を持つ職人の記録が散見されます(例:馬渡喜穂氏は大阪市立工芸高校を卒業後に錫半に入社し、クラフトコンペ入選や大阪府の工芸賞など複数の受賞・顕彰歴が紹介されています)。これらは「錫半」伝統の技術伝承が職人個人の評価へとつながった事例と言えます

代表作品とその意匠(茶器・酒器を中心に)

細やかな彫刻ですね/金工品の買取も福岡玄燈舎
細やかな彫刻ですね

錫半の作例としては、急須・茶入・茶托・酒器・ぐい呑・チロリ(酒注ぎ)・皿類など、茶道・酒席で用いられる器物が中心です。代表的な意匠は以下の点に集約されます。

  • 伝統的フォルムの踏襲:日本の茶道具や酒器の古典的な形に忠実な造形が多く、機能性(密閉性や注ぎやすさ)を重視した設計がされている

  • イブシ(いぶし)仕上げや鏡面仕上げの併用:表面仕上げにおいては、銀色光沢を残す鏡面よりも、わずかに燻したような「イブシ」調の風合いを付与する技法が伝統として見られます(古い錫器には時間経過で独特の落ち着いた色味が出るため、茶器等で好まれる)。

  • 彫金的な意匠や象嵌の採用:一部の高級品や作家物では彫刻・彫金風の文様や、他金属・漆・木材との組み合わせが見られ、器物を飾る装飾性が高まっています。

市場に出る錫半銘の急須や茶入は、内蓋・外蓋の密閉性が高く、茶葉保存に適すると説明されることが多く(茶葉の長期保存に向く旨の説明が流通資料に残る)、その実用性が評価されてきました。

作品の特徴(素材・機能・美術性)

  1. 素材(錫)としての特性を活かす:錫は柔らかく加工しやすい金属で、熱伝導が比較的低いため飲料器具に適しているとされます。民間の説明では「錫に入れた水は腐りにくい」「酒の雑味を取る」という言い伝えがあり、こうした効能的評価が茶器・酒器に錫が用いられる理由の一つです(これらは民間伝承であり、現代の科学的検証とは別に文化的に広まった説明です)

  2. 手仕事による個体差と温かみ:機械生産品と異なり、職人の手仕事で仕上げられるため、同一モデルでも微妙に表情が変わる——これがコレクターや実用者にとっての魅力です。底に入る作銘や刻印(例:「錫半」「本錫」「上錫」など)は来歴や純度の指標として鑑賞上重要です。

  3. 保存性と経年変化:錫は酸化や硫化で表面が変化しやすく、長年の使用・保管で深い色合い(イブシ)が出ることが多い。適切に手入れすれば幻燈的な質感を長く保てる一方、メンテナンス方法(柔らかい布で磨く、歯磨き粉で軽く磨くなど)にも注意が必要とされる。製法の概略(伝統的手法)

錫器は鋳造・打ち延ばし・鍛造・研磨・仕上げ(イブシ・鏡面)といった工程を経ます。錫半に代表される工房規模のものは、鋳造で形を出した後、職人が鍛え・削り・継ぎ目を丁寧に仕上げ、最後に磨きと表面処理を行うという、手仕事が主軸の工程を残している例が多いです。高級茶入のような蓋物は内外の合わせ精度がとくに重要で、これを職人技で出すのが工房の腕の見せ所になります。今回の買取品である茶筒も手作りで彫刻の凝った逸品になっています。

鑑賞・購入・保存上のポイント

  • 刻印を確認する:底面に「錫半」「本錫」「上錫」などの刻印があれば来歴や材質表示の手がかりになります。ただし刻印は模刻や後補の場合もあるため、作風や仕上げの整合性、合わせの精密さ、銀面の質感なども併せて判断すること。

  • 使用時の注意:酸性の強い液体に長時間さらすと変色や腐食の原因になるため、飲料器具として使う場合は使用後の中性洗浄と十分な乾燥が推奨されます。古い錫器の深いイブシ色は多くの愛用者に好まれますが、元の光沢を取り戻したい時は研磨で戻せます(ただし過度の研磨は金属を薄くするので注意)。

★戦前~戦後の産業変遷を経て、錫半という屋号や作銘は「大阪浪華錫器」系譜の一部分として理解できます。大阪を中心とした錫製造の業界史資料は、錫半がかつて工場を運営したこと、戦時期には満州に拠点を持った時期があることなどを伝え、戦前の工業的規模から、戦後の小規模工房化・作家化へと変化した日本の工芸史の一断面を示しています。現代では錫の手仕事は希少性を帯び、作家性や保存性を評価するコレクターも多く、錫半銘の古い品は実用品であると同時に資料的価値を持ちます

錫屋半兵衛とは…

錫屋半兵衛は正徳4年(1714年)、大阪・心斎橋で開業したのが始まりとされています。屋号としては「錫屋半兵衛」、通称「錫半(すずはん)」とも呼ばれます。

錫屋半兵衛(中村半兵衛)は、錫器技術の伝統を京都‐大阪を中心に受け継ぎ、特に明治期に「イブシ仕上げ(燻し仕上げ)」という技法を取り入れて風合いを重視する方向に作品を展開し、そのことで錫器の美術性と実用品としての魅力を高め、国内需要および輸出にも貢献した工人・工房または屋号です。

代表的な作品としては、急須・茶入・茶托などの茶道具類が挙げられ、また、イブシ仕上げ技法を用いた器物がその代表例とされ、焼印や刻印による「本錫」などの銘があるものが典型的です。

錫屋半兵衛(錫半/中村半兵衛)の作品・工房で特に特徴的とされる技術やスタイルは以下の通りです:

  • イブシ仕上げ:錫器の白光沢の後に漆を使って表面を「燻す」ような処理をすることで、鈍い光沢や陰影を出す技法です。凹凸部分には漆が残り、平面部分は拭き取って金属本来の輝きを残す、というような工程を含むもの。明治期以降この技法が錫半の代表的なスタイルとなっています。 手仕事の正確さ・精密な合わせ:蓋物(茶入など)で蓋・内蓋の合わせや密閉度などが丁寧につくられており、実用性と美観の両立が重視された器が多いと伝えられます。特に茶葉保存用の蓋物で「密閉性が高い」という評価を受けるものが見られます。

  • 漂白・純錫表記:「本錫(ほんずず)」など、錫の純度や質を示す刻印が底に入れることがあり、純錫であるかどうかを示す意味があります。錫半の茶器などで「本錫」の刻印が見られるという例があります。 装飾・意匠:装飾性・文様にも手を入れた作品があり、彫金や鏨(たがね)彫り、また凹凸を活かした梨地(ザラザラ・ざらっとした面)と光沢面の対比などが見られます。

 

参考サイト

大阪歴史博物館

大阪錫器株式会社

大阪府庁・大阪府の伝統産業支援

■その他の買取品目

 

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