福岡市南区で小柄・笄(武具)を買取りました!

灼熱の八月、日本中がまるで甕の中の湯気のようにムシムシしている。頑張り時の夏なのに冷房は軒並み悲鳴を上げ、蝉も尻尾巻いて逃げ出したくなるような気候。そんな中、私も「いやが上にも」50度を超えるような“倉庫サウナ”で、じっと汗を滴らせながら、執拗に「仕分け」や「整理」に追い立てられている毎日である。
まるで「骨董屋の修行は汗と涙の賜物じゃ!」と誰かが言ったような気さえする。まさに昭和アニメの脇役みたいに、重い箱をガラゴロ転がし、埃と格闘し、いつ吹くとも知れぬ風を待ちながら。そんな私の耳に、天の救いのような一本の電話が届いた。
電話の向こうからは、どこか淡々とした声。「お父様がね、日本刀とか居合刀、まあ、武具類をお好きでね。断捨離ということで処分しようかと。」
ほうほう、これはまた昭和の“父親あるある”。コレクションも断捨離も、どこか勢いと怠惰が入り交じる昭和的ストーリー。即座に「はい喜んで」と返し、訪問の日取りを決める。暑さに溶けそうな手で帳簿を開きつつ、「出会いは一期一会、買取は人生のスパイス」と自分に言い聞かせながら。
さて当日。訪れたそのお宅は、一見外からは普通の昭和住宅。しかし玄関を開けると、そこはもう“戦国絢爛”の世界だった。正面に鎮座ましますは甲冑と槍の群れ。鎧兜がぴかりと光って「来いよ、見てみろよ」と目で誘っているよう。けど、なにしろ戦後に作られた“後作り”とのことで、お値段は「んー、低い金額になりそうですね…」と心にもない恐縮の笑顔をつくる。昭和っぽいオチとしては「値段は低価格だけど、その存在感はタダ物じゃないのが骨董」ってことで、一笑に付す次第である。
そして床の間に目をやれば、いよいよ日本刀や刀掛けが静かにたたずむ。こちらは“査定金額”よりも、“まだお手元に置いていたい”というお気持ちが乗っかっている。なんとも昭和らしい余情。金額の話はそこでいったん終了。場の空気は「売るのは気が進まない…」という昭和のおやじ美学が支配する。
だが、最もエキサイティングな展開は、タンスの中に潜んでいた。引き出しをガサガサ開くと、そこには鍔(つば)や柄、縁頭(ふちがしら)といったパーツたちが、まるでごった煮のおせちのように転がっている。そのサビ具合といったら、「当時の時間がそのまま固まってる」かのよう。武具界の骨董テーマパーク、それがここにあったのだ。
一見すると「何じゃこりゃ?」だが、よく見ると江戸時代の真性年代物がちらほら。これはもう、査定するしかないでしょう。私にとって、ここは“骨董屋の魂の聖地”と胸の中で叫びつつ、目利きのレーダー全開で査定スタート。
鍔はずっしりしていて、図柄も見事。柄(つか)は長さと細工の妙。目貫(めぬき)や小柄(こづか)に至っては、小さな世界に詩と職人技がぎゅっと詰まっている。どれも骨董収集おやじ的「とりあえず在庫しておいたけど、よく見たら宝物だった」ラインナップ。ひとつひとつ丁寧に値をつけ、組み合わせたり単品にしたり、押さえるところは押さえつつ、頑張ってそこそこの金額を提示。
「ああ、これはうれしいわ」というお客様の笑顔とともに、私は心の中でガッツポーズ。お客さんは日本刀以外のパーツをすべて売ってくださることになった。昭和の“はしょってたら宝が湧いてきた”展開、大成功である。
さて、ここで一度総ざらいすると…
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後作り甲冑:戦国ヒーロー気取りをさせてくれるが、お財布は冷蔵庫並みに冷たい。
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美学のために日本刀は手放せない:金額よりも保存への愛情。昭和には“物を大切に、手放しは慎重に”という美意識あり。
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引き出しの闇から宝が浮上:埃まみれの中に江戸期の名脇役。まさに“棚からボタ餅”ならぬ“箪笥から宝物”状態。
とにもかくにもありがとうございました。
今回の買取品の「小柄」については下記で詳しくお話しておりますので最後までお付き合いください。宜しくお願い致します。
買取品の詳細

◇この「小柄」は江戸期から大正時代の物だと思われ在銘のある物や金銀象嵌のある小柄でした。特に「後藤光孝」銘の小柄は蒔絵の剥げが多いですが鍔では著名な作家です。3本とも時代のある小柄で状態の良いものでした。ありがとうございました。
買取査定額
◇古い小柄の買取査定額もしくは評価額ですがまず第一に作風や作家名、次に時代と状態、ほかには刻印ヤ共箱などあればより高価買取&できます。
ご自宅に武具や甲冑が御座いましたら一度拝見させてください。もちろん状態や時代、作者、作品でもお値段は変わりますのでご了承ください。
■過去の小柄の買取例
赤銅魚子地馬図鍔 400,000円
後藤宗家十三代『後藤光孝』赤銅魚子地囲碁図小柄 100,000円
水仙彫刻小柄 金銀象嵌 80,000円
鳳凰図小柄 50,000円 他多数
後藤光孝とは?

1. 後藤家の伝統と光孝の位置づけ
後藤光孝は、桃山から江戸初期にかけて活躍した金工師であり、とりわけ小柄(こづか)や笄(こうがい)を中心とする刀装具制作において名を馳せた人物です。後藤家は室町時代後期の後藤祐乗(ゆうじょう)を祖とし、室町幕府お抱えの金工師として武家社会に重きをなした家柄です。祐乗以降、光信・光兼・光昌など代々「光」の字を通字とし、京都を拠点に刀装具の制作を行いました。
後藤家は一子相伝の形で技法と意匠を伝え、江戸時代に入ると幕府や諸大名からの注文に応じて繁栄しました。中でも光孝は、後藤本家から分かれた一流派を担った工人として、技巧の冴えと格調の高さをもつ作品を残しています。
2. 光孝の略歴
後藤光孝の生年は16世紀後半頃とされ、没年は17世紀中葉と推定されています。彼は後藤家の分家筋にあたり、当時の当主であった光乗(みつのり)や光利(みつとし)らと並んで「京後藤」の高弟に数えられます。
後藤家の系譜はやや複雑ですが、光孝は四代光乗の門下として学び、後藤家の伝統的な高肉彫金(たかにくほりきん)技法や地金処理を継承しました。その後、分家として自らの工房を開き、将軍家や有力大名の注文に応じて作刀装具を製作したと伝わります。とりわけ豊臣家の遺臣や徳川譜代大名の間で、光孝の作品は珍重されました。
3. 代表作品
光孝の作例は現存数が比較的限られていますが、各地の美術館や個人コレクションに伝わっており、以下のような代表作が知られています。
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赤銅魚子地牡丹唐草図小柄
光孝の代表作のひとつで、赤銅(しゃくどう)を地金とし、魚子地(ななこじ=細かい魚卵状の打ち出し模様)を施し、その上に高肉彫で牡丹唐草文様を表した小柄。後藤家伝統の荘厳さと光孝独自の柔らかい線質が際立つ作品です。 -
獅子図小柄・笄
獅子を主題とした図柄は後藤家の十八番であり、光孝もこれを得意としました。特に「獅子牡丹図小柄」は細部にまで毛並みの動きを表現し、威厳とともに柔和さを兼ね備えた意匠が高く評価されています。 -
竹林七賢図鍔
鍔作品としては数少ない現存例のひとつ。中国の故事「竹林の七賢」を題材にし、赤銅に金銀を象嵌して人物像を配しています。文人趣味を感じさせる作で、武士階級の中でも知識人層に愛玩されたと考えられます。 -
龍図目貫
光孝の目貫作品も高く評価され、特に龍を題材にした作は力強さと流麗さを兼ね備えています。目貫は大小刀の柄に用いられるため、小柄や笄との揃い物として制作されることが多く、光孝の工房では「龍・獅子・牡丹」を三大主題としました。
4. 光孝作品の特徴
(1) 技法面
光孝の作品は、後藤家伝統の高肉彫金(たかにくぼりきん)を基本としています。これは地金を深く彫り込み、肉厚に盛り上がった文様を作り、その上に金や銀を象嵌したり、部分的に色金を用いて装飾する技法です。作品表面には魚子地(ななこじ)が多用され、荘厳で緻密な質感を生み出しています。
また、地金には赤銅を好んで用い、深みのある黒紫色と、象嵌の金銀のコントラストを引き立てました。これにより、重厚でありながら華美すぎない格調を備えた意匠が実現しました。
(2) 意匠面
後藤光孝の意匠は、獅子・龍・牡丹・唐草・七賢人などを題材とするものが多く見られます。これらは後藤家の伝統的主題を踏襲しつつ、光孝は線描を柔らかく、やや丸みを帯びた造形にまとめる傾向が強いと指摘されます。
とりわけ獅子図においては、従来の勇壮さ一辺倒ではなく、どこか愛嬌を感じさせる表現を行い、鑑賞者に親しみやすい印象を与えます。
(3) 格調
後藤家の作品は武家社会の正装用に用いられることが多く、「威厳・荘重」を旨としました。光孝もこの系譜を守りつつ、過度に硬直した表現を避け、装飾的な楽しさを意識した点が特徴的です。そのため彼の作は「京後藤の端正さ」と「町人趣味の軽妙さ」をあわせ持つと評されます。
5. 後世への影響
後藤光孝は、後藤本家からの分派として活動しながらも、京金工の隆盛に大きく寄与しました。彼の作品は江戸後期に至るまで収集・鑑賞の対象とされ、特に寛文~元禄期の大名・旗本の間で珍重されました。
また、光孝の作風は後藤家の中でも「柔和で端正」という系統を築き、弟子や子孫たちにも受け継がれました。その影響は江戸時代後半に流行した町彫師の作風にも及び、後藤家に比して自由な図案展開を見せる礎となったともいわれます。
■参考サイト
東京国立博物館(東京・上野)
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東京国立博物館には、後藤光孝の銘がある小柄・笄「十二支図三所物」が所蔵されています。川田龍吉氏からの寄贈品で、コレクション番号は F-13728 です。
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ただし、展示される時期は不定期のため、最新の展示スケジュールは公式サイトや館内案内でご確認ください。
彦根城博物館(滋賀県・彦根)
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こちらの館では、かつて開催された特別展「日本の刀装-刀を飾る技と美-」の中で、「宇治川先陣図二所物」銘 後藤光孝(花押)が展示された記録があります。
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展示は前期・後期と分かれるケースが多く、現在も常設展に含まれている可能性は低いため、企画展の情報や展示スケジュールを直接確認するのがおすすめです。
■その他の買取品目
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