福岡市早良区で井上萬二作品を買取りました!

白磁の湯呑です//骨董品買取の福岡玄燈舎
白磁の湯呑です

◇福岡の朝晩、エアコン要らず—なんて錯覚も儚く消える。昼下がりの陽射しは依然として貴族的な猛りを見せ、我々は汗と共に骨董品という名の蜃気楼を追う。

今回の骨董品買取は早良区の高層マンション。その名の如く、都会の風を一望できる窓際。だがその窓は、ただ景色を見せるためだけにあらず。外の酷暑と内の冷房の戦場を映す鏡である。

そして「涼しい顔をしたやり手の業者」が街角に現れ始める。彼らはノータイムで「査定」と「買取」という二言を吐き、骨董品業界の春を待たずして乱獲を始める。われわれもそのひとつになるべく、相方と共に訪問の鐘を鳴らした。

祖父が遺した品々—絵画、茶道具、刀槍、柿右衛門の皿に花瓶。どれも丁寧に包まれて、封じられている。封じられているが、どこか物語を叫んでいる。 品数は三十でも百でもない、五十。その数字がまた狂おしいほど人間らしい。少ないようで、十分に重い。多すぎず、少なすぎず、絶妙に「品評されるくらい」の量。われわれは部屋に入り、芸術と歴史の匂いをかぎながら、段ボールを開ける音よりも静かに、心の扉をそっとノックする査定を始めた。

査定時間は約二時間。おお、二時間。冷房の音、紙袋の擦れ合い、虫の声かと思えば外の交通の呻き。すべてが混ざって、「査定」の儀式となる。相方が一枚ずつ布を剥いでゆく。皿のひび、釉薬の光沢、刀の刃の(しのぎ)、茶碗の指のなぞり跡。見えるものすべてが「価値」の映し鏡。しかしその価値は、鑑定書でも価格表でもなく、見せ方と口上と態度とタイミングで決まるものだ。 我々は汗だくになりながら、しかし冷静であろうと努めた。絵画を少し高めに、茶道具は季節の香りを言葉に乗せて、刀槍には「戦国の風」のような語りを添える。柿右衛門の皿は、朱と藍の対比を風景に譬えて語る。花瓶は花が咲かぬとも美しい、存在の凛とした姿を讃える。こうして、品物が「ただの物」から「骨董品」へと昇華される瞬間を演出する。

そして、査定結果。依頼主のおばあちゃん、違う、依頼主は「お任せ金額」という言葉を放った。それはまるで—天使のような言葉だった。だが、よく考えてみれば、それは放棄でもあり、信頼という名のギャンブルである。「これをあなたに任せます。あとはあなたの良心と技術で」。我々は微笑み、その言葉を胸に刻む。天使が差し出すのは、翼だけじゃない。責任と期待も一緒に握られている。なんという重い言葉だ。

「買取品のひとつに、人間国宝の井上萬二さんの作品もありました」。この一文が、空気の温度をひときわ冷たくする。それは誇りであると同時に、重荷である。人間国宝。名前だけで震えるほどの権威。だがそれはまた、「価値」の計測にさらなる針を付け加える。釉薬の違い、土の質、焼きの乱れ—どれひとつとして見逃せぬ。われわれは井上萬二さんのその作品を前に、呼吸を整えた。 刀槍を見るときのような敬虔さを持って、それの胎土を、釉の掛け方を、底の銘を、裏側の小さな瑕疵さえも丁寧に見た。その瞬間、骨董とは究極の真贋のゲームであり、信用と技術と歴史の三角関係で成り立っていることを再確認する。 終わる頃には、冷房の風も外気も忘れるほどに集中していた。

共箱の裏にも銘があります/骨董品買取は福岡玄燈舎
共箱の裏にも銘があります

見積もりを提示し、お任せ金額という贈り物を受け取る。その言葉には、ありがたさと恐れと誇りが混じっている。そして買取り契約書にサイン。われわれは品を包み、トラックか手提げ袋か知らぬが、持ち帰る――ただの物が、我々の手に一時的に所有の重みを運ばれる。 帰り道、早良区の道すがら、陽はまだ高い。暑さは肩に食い込む。背中に営業車の排気ガスが絡みつく。だが心は少し冷えている。なぜなら、品物ひとつひとつが教えてくれたからだ:価値とは金額だけでなく、時間と手間と眼力と嘘と誠の混合物である、と。 その夜、布団に横たわるとき、頭の中には柿右衛門の染付けの藍がちらつく。井上萬二の釉薬の光沢が、遠くに波打って見える。高層マンションから見下ろした街灯の群れが、骨董品の影のように揺れている。

妙なものである。我々は「暑さ」を避けるために、品物の冷たさを測り、「価値」の熱を探し、「信頼」という氷を育てる。査定も買取も、単なる商売ではない、儀礼であり、戦争であり、舞台である。客も業者も、演じ手である。 感謝を込めて。ありがとう、祖父の遺した物たち。ありがとう、お任せ金額という天使の囁き。ありがとう、井上萬二さん、あなたの釉のひとしずくが、この日の査定に花を咲かせた。そして、ありがとう皮肉というスパイスが、骨董品の甘さを少し引き締めてくれた。ではまた…。

買取品の詳細

笹の文様が控えめですがとても綺麗です/骨董品・福岡
笹の文様が控えめですがとても綺麗です

◇この湯呑はとてもシンプルな白磁の品物で「笹文様」の施しがあります。未使用品で栞や共箱もとてもきれいな作品でした。ありがとうございました。

買取査定額

 

◆井上萬二山の作品の買取査定額ですがまず第一に人気作品かどうかと本人作品かどうか、次に状態、付属品の有無などでより高価買取&できます。なお、井上萬二さんの作品は「白磁緑釉」が有名で高値が付きます。ありがとうございました。尚、ご自宅や倉庫に人間国宝作品がありましたら是非、骨董品買取の福岡玄燈舎にお声掛け下さいね。宜しくお願い致します。

 

 

 

■過去の作品買取例

白磁六画花器  700,000円
白磁瓜型壺 特大 500,000円
天目茄子 香炉  350,000円
青白磁牡丹彫文花器 150,000円 他多数

 

◇井上萬二とは…

作品の裏には銘があります/骨董品・買取
作品の裏には銘があります

◇井上萬二は1929年(昭和4年)、佐賀県西松浦郡有田町に生まれました。有田といえば、日本磁器の発祥地として知られ、400年以上の伝統を誇る「有田焼」の本場です。井上家も代々陶工の家系であり、幼い頃から磁器づくりを身近に感じながら育ちました。

戦後間もない混乱期に青年期を迎えた井上は、一時期は軍属として徴用されるなど波乱を経ますが、復員後に本格的に陶芸の道に進みます。当初は窯業試験場で技術を学び、さらに佐賀県立有田工業学校(現在の有田工業高等学校)で磁器制作の基礎を習得しました。若くして磁器成形の腕を磨き、職人としての道を歩み始めます。

1950年代には佐賀県窯業試験場に勤務し、ろくろ成形や白磁の研究に従事。徹底した合理性と高い技術を培う一方で、伝統と現代性をどのように融合させるかという課題に直面しました。その後、京都の巨匠である清水六兵衛石黒宗麿(重要無形文化財保持者)らの作風に触れる機会を得て、自らの作陶の方向性を確立していきます。

1968年には日本工芸会正会員に推挙され、国内の公募展で数多くの受賞を重ね、1987年には日本工芸会理事に就任。1995年、白磁の重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されました。


■井上萬二の作品の特徴

井上萬二の代名詞は「白磁」です。透き通るような純白の磁肌と、端正なフォルムは、多くの鑑賞者を魅了してきました。その特徴を整理すると次のようになります。

  1. 純白の美
     有田の陶石を生かし、余計な装飾を排した白磁は、光を柔らかく反射し、凛とした清潔感を漂わせます。「白磁の井上」と呼ばれる所以です。

  2. 端正で均整の取れた造形
     井上のろくろ技術は極めて高く、厚みやバランスに狂いのない形を生み出します。特に壺や瓶などは、細部に至るまで緊張感を保ちつつ、柔らかな曲線を描く造形美を特徴とします。

  3. 静謐と気品
     装飾性を排除することで、造形そのものと白磁の質感が引き立ち、作品全体に静けさと気品が宿ります。見る者の心を澄ませるような「無言の力」があります。

  4. 伝統と革新の両立
     井上は伝統的な白磁の技術を継承する一方、現代的な造形感覚も取り入れています。特に大作の花器や壺は、古典的な器形に現代的なシンプルさが融合しています。


■代表作品

井上萬二の代表作には、以下のようなものがあります。

  • 《白磁壺》
     人間国宝認定の決め手となった代表作。シンプルな丸壺の中に、端正さと柔和さが同居し、白磁の極致と称されます。

  • 《白磁鉢》
     薄く引き延ばされた見事なろくろ技術が光る作品。大鉢の曲線美と磁肌の滑らかさは、井上の技の冴えを示します。

  • 《白磁花器》
     井上の作品の中で特に人気が高いのが花器です。花を生けなくても美しい彫刻作品として成立し、国際的な美術展でも高く評価されています。

  • 宮内庁納入品
     天皇・皇后両陛下の御用に供された作品も数多く、国家的な信頼を受けていることがわかります。

  • その他、白磁に緑釉薬を施したものには人気が高いです。

■受賞歴・栄誉

  • 1969年 日本伝統工芸展「NHK会長賞」受賞

  • 1977年 日本陶磁協会賞受賞

  • 1987年 日本工芸会理事就任

  • 1995年 重要無形文化財「白磁」保持者に認定(人間国宝)

  • 2002年 紫綬褒章受章

  • 2013年 旭日中綬章受章


■井上萬二の影響と弟子

井上は、有田焼の近代以降において最も高い評価を得た陶芸家の一人であり、国内外に弟子を育て、後進の育成にも尽力してきました。彼の作品はニューヨークのメトロポリタン美術館、東京国立近代美術館、九州陶磁文化館などに所蔵され、世界的に紹介されています。

また、近年では井上の白磁に触発された若手陶芸家たちが「現代の白磁」の新たな可能性を追求しており、その精神は確実に受け継がれています。

 

◎関連、参考サイト

存在感のある立体的な絵付けです/福岡の骨董品買取は玄燈舎
存在感のある立体的な絵付けです

. 佐賀県立九州陶磁文化館(佐賀県)

 九州陶磁全般を集大成的に収蔵しており、井上作品も重要コレクションの一つ。地元出身作家として常設・企画の両面で紹介されます。

. 佐賀県立博物館(佐賀市)

 県ゆかりの文化人として井上萬二の作品を収蔵。特別展で展示される機会があります。

. 国立工芸館(石川県 金沢市)

 2020年に東京から移転した国立工芸館でも、井上萬二を含む人間国宝の白磁作品が収蔵されています。

 

■その他の買取品目

 

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