福岡市早良区で春画の掛軸を買取りました!
◇「まだ暑さが残る9月の午後、福岡市郊外の静かな住宅地に骨董品鑑定の出張へと向かった。エアコンの効いた車内から一歩外に出ると、照りつける太陽と湿気が一気に襲いかかってきた。こんな日はカミさんと仲良く?かき氷でも食べたい気分だが、現場に到着するとそれどころではなかった。
今回の依頼は、亡くなったおじいさまの遺したコレクションの整理だった。掛軸や日本刀、象牙の置物、さらには第二次世界大戦で出征した方の勲章や軍服までがずらりと並んでいた。なんだか、博物館の収蔵品のような品々だ。ところが、依頼者のおばあさまが『これ、価値あるのかしら?』と困惑気味に尋ねてくるので、何でも鑑定しますよという気持ちで引き受けた。
まずは掛軸から査定を始める。何せ80本もあるので、一つ一つ丁寧に開いていくと、古い墨の香りが漂い始める。途中、たまに『ああ、これは素敵な景色ですね』とか『この書はなかなか達筆です』なんて言いながら進めていった。だが、その途中、何とも言えない絵柄がちらほら出てくるではないか。それも、一目見て『これはお嬢さまにはお見せしない方がいいかもしれません』と思わず口にするような作品たち。そう、それが噂の「春画」だった。掛軸の中にしれっと混じっている春画は、まるで場違いな紳士がパーティーに潜り込んでいるようなものだった。おじいさま、どれだけ楽しんでたんだろうか…とつい心の中で微笑んでしまった。
春画というのは、江戸時代から明治時代にかけて広く知られた版画形式の一種だ。これをお遊びと呼ぶか、アートと呼ぶかは人それぞれだが、掛軸になっているものとなると非常に珍しい。たいていはお手頃価格の木版画だが、今回のものは肉筆で描かれた高級品だ。おじいさま、こだわりが強かったのだろう。『私に見せてくれてありがと!』と握手しそうになるのをこらえて、査定を続けた。
『この掛軸、なかなか立派ですねえ』と何とも言い難い賛辞を述べながら、おばあさまの顔色をうかがう。幸いなことにおばあさまは笑顔で『あら、そんなものまで残っていたのねぇ』と、どこか懐かしそうに微笑んでおられた。どうやら理解が深いご様子。もしかして、おばあさまも若い頃にご覧になっていたのかもしれないが、あえて深掘りはしなかった。
この春画の価値というのは、時代を超えて受け継がれる美の一種である。と言いたいところだが、どう説明したものか。こうした作品を手に入れた殿方たちは、きっと隠し場所に困り、こっそりと楽しんでいたのだろう。まさに男のロマンの結晶と言える。私も一応男なので、ちょっと共感を覚えた。
『次の世代にも引き継いでいただきたいですね』と何とか取り繕って、無事に査定して買取を終えた。おばあさまもご満足いただけたようで、『おじいさんの大事にしていたものを、次の人にも渡してもらえるなら、それでよいわ』と感慨深げに言っておられた。「男のロマンの橋渡し」という役割を担うとは、思いもよらなかったが、これも骨董品鑑定士の仕事の一環なのだろう。帰り道、ふと車の窓から空を見上げると、まだ夏の名残が残る青空が広がっていた。今では見られない春画という夏の名残のような作品を、少し熱くなった胸の内で再び思い返し、私は次の仕事へと向かったのであった。」
春画については下記で詳しくお話しておりますので最後までお付き合いください。宜しくお願い致します。
買取品の詳細
◇「春画」は多くは木版画や浮世絵が有名ですが今回は「肉筆」の掛軸に施されていた作品でした。状態は作品自体には時代相応のダメージはありましたが破れや色飛び、変色などは少なかったです。絹本ではなく紙本でしたので裏打ちもしっかりしていました。表装はかなりダメージがありましたが査定にはあまり影響はありませんでした。絵の大きさは40cm×30cmくらいでした。ありがとうございました。
買取査定額
銀巻のジョイントです
◇春画掛軸の買取査定額もしくは評価額ですがまず第一に作者の知名度、次に状態ほかには刻印が複数あればより高価買取&できます。なお、今回の掛軸は状態は良いですが残念ながら作者名がなかったので15000円の買取価格になりました。自宅に春画の掛軸や浮世絵、版画、巻物が御座いましたら一度拝見させてください。もちろん状態や時代、作者、作品でもお値段は変わりますのでご了承ください。
■過去の春画作品買取例
葛飾北斎 春画本 全3冊揃 700,000円
拝開夜婦子取 (よぶことり)」大錦十二枚組物 390,000円
花鳥余情吾妻源氏 歌川国貞 200,000円
歌麿 絵本常陸帯3冊揃 50,000円 他多数
春画とは?
◆春画(しゅんが)とは、主に江戸時代に制作された、日本の伝統的なエロティックアートです。簡単に言えば、男女の愛の行為や親密なシーンを描いた浮世絵や絵巻物のことを指します。春画は、現代の感覚では少し大胆に思えるかもしれませんが、当時の日本では大人の娯楽として広く親しまれていました。
春画の特徴
春画は、繊細で美しい浮世絵のスタイルで描かれ、男女の裸や愛の営みがコミカルかつ情熱的に表現されています。ただ単にエロティックな絵というだけではなく、当時のファッションや風俗、暮らしぶりなども細かく描かれており、その文化的な価値も高いとされています。
春画の役割
春画は、主に大人の娯楽や教育の一環として使われていました。特に、結婚前の女性に対して、夫婦生活の予習として持たされることもありました。また、長い旅路に出る商人や武士が、妻や恋人を思い出すために持ち歩いたり、庶民が楽しむ絵として広く流通していました。
春画の歴史
春画は、江戸時代の初期から人気を集め、特に18世紀から19世紀にかけて最盛期を迎えました。浮世絵の名手として知られる葛飾北斎や歌川国芳といった著名な画家も、春画を制作していました。当時、春画は「大人の絵本」として庶民から上流階級まで幅広く親しまれており、特に江戸や京都、大阪といった都市部でよく見られました。
春画の種類
多くの春画は「浮世絵」と呼ばれる版画形式で作られていました。浮世絵は木版印刷によるもので、大量生産が可能だったため、安価で広く普及しました。一方、特別な注文で作られた「肉筆春画」と呼ばれる手描きのものもあり、これは非常に希少で高価なものでした。今回の作品もこれに当たり当時としてはかなり高価だったと思われます。
春画の価値と現在
現代において春画は、当時の文化や社会を知るための貴重な資料として高い評価を受けています。美術館で展示されることもあり、その芸術性や歴史的背景に注目が集まっています。ただし、その性質から、一部の人には抵抗を感じさせることもありますが、春画は単なるエロティックな絵画ではなく、当時の人々の生活や思想を垣間見ることができる文化的な遺産です。春画は「江戸時代の大人の楽しみ方」として、今でも研究者やアート愛好家の間で大切にされています。特に外国人にはとても人気があるアンティークのアイテムです。
★春画の代表作品6選…
1. 葛飾北斎(かつしか ほくさい)
代表作:『喜能会之故真通(きのえのこまつ)』 葛飾北斎は、浮世絵の巨匠であり、「富嶽三十六景」などで知られる一方、春画でも高い評価を受けています。彼の春画集『喜能会之故真通』は、男女の性愛をユーモラスかつ細かい筆致で描いた作品群です。大胆な描写と緻密な構図が特徴で、登場人物の表情や姿勢に北斎ならではのユーモアが溢れています。また、北斎は自然や動物との対比を交えた独自の視点で春画を描いており、「タコと海女」のような奇抜な作品も有名です。
2. 鳥居清長(とりい きよなが)
代表作:『歌枕』(うたまくら) 鳥居清長は、優美で洗練された描写を得意とする浮世絵師で、その美人画とともに春画でも有名です。彼の春画は、当時の風俗や美的感覚を反映したもので、特に女性の描写において、清長ならではのエレガンスが感じられます。『歌枕』は彼の代表的な春画集で、男女の情愛が上品かつ繊細に描かれ、登場人物の着物の美しい柄やしなやかな動きが特徴的です。
3. 喜多川歌麿(きたがわ うたまろ)
代表作:『歌まくら』(うたまくら) 美人画の名手として知られる喜多川歌麿は、春画でも大いに活躍しました。彼の代表作『歌まくら』は、性愛を描いた浮世絵春画の傑作として知られ、特に女性の官能的な姿や表情が際立っています。歌麿の春画は、美しさと同時にリアルな感情を描写し、当時の男女の関係性を生き生きと描き出しています。
4. 鳥居清倍(とりい きよます)
代表作:『秘戯図巻』(ひぎずかん) 鳥居清倍は、鳥居派の初代として知られる浮世絵師で、彼の描く春画は非常に大胆かつ直接的な描写で人気を博しました。『秘戯図巻』は、その代表作で、巻物形式で男女の密接な場面が連続的に描かれています。清倍の作品は、当時の風俗や日常生活を背景に、性の営みがリアルに描かれており、現代でも研究者の間で評価が高いです。
5. 歌川国芳(うたがわ くによし)
代表作:『助六由縁江戸櫻』(すけろくゆかりのえどざくら) 歌川国芳は、勇壮な武者絵で有名ですが、春画においても独特のユーモアと大胆さが際立っています。『助六由縁江戸櫻』は、歌舞伎の登場人物である助六を題材にした春画集で、国芳ならではの洒脱なストーリーとコミカルな描写が楽しめます。彼の春画は、物語性が豊かで、まるで一幕の芝居を見ているかのような展開が魅力です。
6. 懐月堂安度(かいげつどう あんど)
代表作:『枕絵』(まくらえ) 懐月堂安度は、独特の美人画スタイルを持ち、体のふくよかさや色気を強調した描写で知られています。彼の『枕絵』は、当時の美しい女性たちのエロティックな姿を描いた作品で、女性の描写における曲線美と豪華な衣装の表現が特徴です。安度の作品は、女性の柔らかさと官能を巧みに捉えており、他の作家とは一線を画す作風を持っています。
■参考サイト
国立国際美術館(大阪)
■その他の買取品目
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