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福岡県春日市で横石臥牛の作品を買取りました!

二月の福岡は、暦の上ではまだ冬だというのに、どういうわけか春の仮面をかぶっている。吐く息は白くないくせに、財布の中身は相変わらず寒い。虫たちは「そろそろいいだろう」と地面を押し上げ、草花は「では失礼」と芽を出す。猫は日向を探し、鳩はやけに自信ありげに歩く。世の中がそんな具合に、ゆるり、と再起動を始める頃合いになると、われわれ骨董屋も、冬眠から目覚めた熊ほどの慎重さでのっそりと店の戸を開ける。
骨董屋の冬眠は、食べ物がなくなるからではない。お客が減るからである。寒い時期、人は壺よりも炬燵を愛する。皿よりも鍋を重んじる。美術品よりもみかんを選ぶ。そういう現実に、われわれは毎年きちんと計算して敗北する。そして二月。気温が少し緩むと、人の気持ちもゆるむ。押し入れの奥の桐箱が、ふと気になり出す。遺品整理という名の感傷と、断捨離という名の決断が、春の空気に乗ってやって来る。
そんな折、一本の電話が鳴った。
「有田焼が沢山あるんですが」
「沢山!」なんとも甘美で、同時に不吉な言葉である。大量の中身が宝とは限らない。むしろ大量であるほど、こちらの腰は引ける。だが話を聞けば、深川や香蘭社、現代作家の器、古伊万里まであるという。さらには鍋島、そして中国明時代の壺や花瓶も混ざっているらしい。
骨董屋の耳は、その瞬間だけ都合良くよくなる。
体ならしにちょうどいい。そう自分に言い聞かせ、福岡県春日市へ向かった。春日市は穏やかな住宅地である。穏やかな住宅地ほど、押し入れの奥にドラマが潜んでいる。玄関先で挨拶を交わし、通された部屋を見て、私は一瞬、言葉を失った。
段ボール。
段ボール。
そして段ボール。
それは山であった。いや、山脈であった。紙のアルプスである。頂上にはガムテープという名の雪が積もっている。私は思った。人は生きている間、自分の意志とは裏腹に箱を増やす生き物なのだ、と。
まずは開封である。カッターを入れる。中から現れるのは、新聞紙にくるまれた器、緩衝材に包まれた皿、そして桐箱。桐箱というのは、骨董界の礼服のようなもので、着ているだけで三割増しに見える。もっとも、礼服の中身が必ずしも紳士とは限らない。
三時間。ひたすら仕分ける。汗ばむ二月。冬の名残と春の気配が入り混じる部屋で、私は黙々と箱を開け続けた。新聞紙のインクが指に移る。桐箱の蓋を外すたび、かすかに漂う木の匂い。中から現れるのは、伊万里の染付、有田の色絵、鍋島の静かな気品。時折、どう見ても江戸の風をまとった黒々とした木箱が現れ、こちらの背筋を正す。
裸のままの器もある。包まれもせず、ただそこにいる皿。そういう皿は、不思議と堂々としている。箱入りは箱入りで気位が高く、裸は裸で開き直っている。我々人間と同じだ。
査定に入る。ひとつひとつ手に取り、光に透かし、高台を確かめ、絵付けの筆致を追う。骨董屋の目は、虫眼鏡よりも疑り深い。美しいという感情と、冷静という職業が、常にせめぎ合う。
伊万里の古作は、やはり格が違う。時代を越えてなお残る線の強さ。色の冴え。どこかに宿る、当時の職人の無言の自負。鍋島は静かだ。声高に語らない。だが、語らぬことこそが美徳だと言わんばかりの佇まいである。
そして中国明の壺。異国の風が、段ボールの山からふいに吹き抜ける。海を渡り、時代を越え、いま骨董品コレクターの一室に座っている壺。考えてみれば、物というのはずいぶんと忍耐強い。持ち主が変わり、家が変わり、価値が変わっても、ただ黙ってそこにいる。
すべての査定が終わったのは、約六時間後だった。六時間。朝に始まり、いつの間にか午後も深い。腰は正直で、膝はやや反抗的である。だが目の前に積み上げられた骨董の品々は、確かな重みを持っていた。
量もあり、質も悪くない。提示した金額は、春の空気に似合う、少し弾んだ数字になった。もちろん、擦り合わせはある。骨董品やアンティークの値段は、品物と同じくらい、感情でできている。思い出という見えない釉薬が、価格に微妙な光沢を与える。
最終的に、すべて買取となった。
段ボールの山は、今度は私の側へと移動する。さきほどまで他人の歴史だったものが、いまや私の責任となる。骨董屋とは、過去のバトンを受け取る仕事なのだろう。

その中に、比較的新しい作品もあった。臥牛窯の器である。私は個人的に、この窯の作が好きだ。古美術の威厳とは別の、どこか軽やかな気骨。新しいが、軽薄ではない。伝統に寄り添いながら、きちんと自分の足で立っている。古いものばかりをありがたがる骨董界にあって、少しばかりの新風は、時に救いになる。
古ければ尊い、という単純な話ではない。古くてもつまらないものはあるし、新しくても芯のあるものはある。骨董屋の仕事は、年齢を数えることではなく、命の濃度を測ることだと思っている。
作業を終え、家を出ると、夕方の空はすでに春色を帯びていた。日差しは柔らかく、風はまだ冷たい。虫たちはきっと、どこかでまた動き出しているだろう。花は咲く準備を整え、猫は再び日向を探す。
そしてわれわれ骨董屋も、そろそろ本格的に動き出す。
段ボールの山に埋もれ、桐箱の蓋を開け、値段をつける。その一連の営みは、傍から見れば地味で、埃っぽく、時に胡散臭い。だがその実、過去と現在を縫い合わせる、まるで小さな外科手術のようなものだ。
春一番の骨董品買取は、こうして幕を下ろした。
とはいえ、幕が下りたところで、またすぐ次の幕が上がる。押し入れは尽きず、段ボールは減らず、人の思い出はいつも少し多すぎる。
二月の福岡。暖かな空気の中で、私は次の電話を待つ。虫や花や動物たちに負けぬよう、骨董屋もまた、ごそごそと動き続けるのである。
ではまた。
この臥牛の器については下記で詳しくお話しておりますので最後までお付き合いください。宜しくお願い致します。
買取品の詳細

◇この「臥牛窯の器」は昭和の物だと思われ作りも薄く繊細な焼物でした。絵付けも細やかで臥牛独特の細い筆使いが前面に出た刷毛目模様で深い色合いの作品です。共箱付きの美品でした。ありがとうございました。
買取査定額

◇臥牛窯作品の買取査定額もしくは評価額ですが絵付けや人気の図柄、そして大きさや状態、ほかには栞や共箱などあればより高価買取&できます。ご自宅に現川焼や臥牛作品が御座いましたら一度拝見させてください。
■過去の作品買取例
横石臥牛 作 神代桜壷 100,000円
十三代 横石臥牛 白鷺文壷 90,000円
十三代横石臥牛 枯木雪山絵壷 75,000円
十三代横石臥牛 桜鷺文花瓶 身延山久遠の瀧桜65,000円 他多数
現川焼とは?

● 歴史と略歴
現川町(うつつがわ)は長崎市北部に位置する山間の地で、ここで焼かれた陶器が「現川焼」です。創始は江戸時代初期、17世紀前半とされ、朝鮮半島から渡来した陶工によって窯が開かれたと伝えられています。
長崎という土地柄、当時は中国・朝鮮・オランダなど海外との交易が盛んであり、陶磁文化の交流拠点でもありました。現川焼はそうした異文化の影響を受けつつ、日本的な茶陶の精神とも結びつき、独特の作風を育みました。
しかし、操業期間は比較的短く、江戸中期には衰退。一時は「幻の窯」とも呼ばれる存在になります。その後、昭和期に復興が試みられ、伝世品の研究をもとに再興現川焼として現代まで続いています。
● 作風と特徴
現川焼の最大の特徴は、
「素朴さの中に潜む気品」
にあります。
① 砂混じりの胎土
やや粗い土味を持ち、器面に鉄分が現れることもあります。これは唐津焼にも通じる要素ですが、現川焼はより端正で、造形に緊張感があります。
② 灰釉・藁灰釉の柔らかい表情
白濁した釉薬が器を包み、淡い青味や乳白色を帯びます。釉だまりや流れが景色となり、静かな美を生み出します。
③ 朝鮮陶の影響
井戸茶碗を思わせる高台の削り、素朴な碗形など、李朝陶磁の影響が色濃く見られます。華美な装飾はほとんどなく、形と釉の景色で勝負する焼き物です。
④ 茶陶としての評価
桃山陶の流れを汲む侘び寂びの精神に通じ、茶人からの評価も高い焼き物です。豪奢さではなく、静謐さが魅力です。
● 代表的作品
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茶碗(特に井戸形)
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水指
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花入
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皿・鉢
特に茶碗は現川焼の代名詞的存在で、古作は数が少なく希少性が高いとされています。
◆横石臥牛とは…

現川焼の残された一握りの品は幻の銘陶となり後世への伝説となりました。
その幻となった秘法を求めて二百年以上もの間、人々は幾多の挑戦を重ねてきましたが、誰の夢も叶わず、それは決して再現できませんでした。
この秘法の謎を解き明かし現代に蘇らせたのが12代 横石臥牛(先先代)であり、再現を完全なものに仕上げたのが13代 横石臥牛兄弟(先代)です。
繊細な刷毛目や立体的な盛り上げ技法には、生の濡れた状態の素地への加飾が不可欠で、一般的な磁器の五倍はかかるこの秘術が空間表現や立体表現を可能にする現川焼の最大の秘密です。
特に臥牛窯を代表する品は白鷺の文様を描いた作品です。今回の買取品もこれに当たります。
堂々とした風格のある花瓶の器体の上に写真を貼ったかのように手描きされた白鷺。背景の刷毛目技法が表す奥行きのある空間表現も現川焼の技法が活きています。
古来より白鷺は「鷺」の文字が示す通り「路(みち)をひらく鳥」と云うことで開運の意味を持つ吉祥文として大切にされてきました。今回の「白鷺文花瓶」は形状・柄ともに臥牛窯の代表的な作品です。
■参考サイト
■その他の買取品目
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