
福岡県太宰府市で京楽焼の万年青鉢を買取りました!

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六月の福岡。梅雨の雲は「今日は降るぞ」と脅しておきながら結局降らず、人間だけを蒸し風呂へ放り込んで満足しているらしい。もっとも、最近の天気予報というものは、政治家の公約と同じくらい「そうなるかもしれません」で出来ているから腹も立たない。
そんな湿気の中でも、我々骨董屋だけは相変わらず元気である。いや、元気というより、買取の電話一本で犬のように尻尾を振って飛び出す悲しい習性が身についてしまったと言うべきか。
「太宰府ですが、植木鉢なんか見てもらえますか?」
受話器の向こうから控えめな声が聞こえる。
植木鉢。
この言葉ほど骨董屋を悩ませる単語もない。
ホームセンターで三百円の鉢が百個並んでいても困るし、逆に明治時代の蘭鉢が一つ転がっているだけで小躍りしたくなる。
つまり植木鉢とは、開けてみるまで中身の分からない福袋なのである。
「とりあえず行きましょう。」
いつもの相方は、宝くじ売場へ向かう人間より希望に満ちた顔でハンドルを握った。
太宰府へ向かう道は平日にもかかわらず車が多い。
学問の神様へ願掛けに向かう受験生、観光客、そして我々骨董屋。
神様から見れば、「お前たち、願う前に働け」と言いたいかもしれない。
依頼主のお宅は、いかにも庭師さんらしい立派な家だった。
庭石が据えられ、松は見事に枝ぶりを整えられ、飛び石一つにも美学がある。
ところが庭の片隅には、中国製らしい植木鉢や水盤が山のように積まれている。
「これ全部いらなくなってね。」
依頼主はあっさり言う。
いらないと言われても、植木鉢にも人生がある。
かつては立派な松を支え、主人に水をもらい、春には花を咲かせる手伝いをしてきたのである。
人間は年を取ると施設へ行き、植木鉢は庭の隅へ追いやられる。
世の中とは実に公平で残酷だ。
早速査定開始。
中国の植木鉢。水盤。大壺。染付の皿。茶器。掛軸。
次から次へと拝見する。
「おっ、これは…。」一瞬胸が高鳴る。しかし裏を見る。
昭和。また昭和。さらに昭和。
まるで昭和が大安売りでもしていたかのように昭和である。
骨董屋という職業は、この「期待」と「落胆」の繰り返しで胃袋が鍛えられる。
依頼主は期待に満ちた目でこちらを見る。
「どうです?」「ええ…よく残っていますね。」
これは骨董屋独特の便利な日本語である。
傷も少ない。状態も良い。しかし古くない。
つまり値段は上がらない。
だが、それを正直に一言で言えば空気は凍る。
だから曖昧な笑顔が商売道具になる。
一点一点査定していくたびに、計算機の数字は少しだけ増える。
しかし依頼主の期待ほどには伸びない。
私の心の中では、見えない電卓が「もう少し、もう少し」と悲鳴を上げていた。
相方も無言だ。
骨董屋が無言になる時は二つしかない。
とてつもない宝物を見つけた時。
もう一つは、その逆である。
今回は後者の気配が濃厚だった。
「あと奥の部屋にもありますよ。」
救世主の一言である。人生、最後まで諦めてはいけない。
競馬も骨董品も九回裏も同じだ。奥の襖がゆっくり開いた。
その瞬間だった。
「うおっ!」思わず声が漏れた。そこだけ空気が違う。

古い蘭鉢。万年青鉢。しかも錦鉢まで混じっている。
龍が舞い、鳳凰が羽を広げ、金彩は時代を経てもなお輝きを失っていない。
さらに棚の上には、中国青磁。青磁独特のやわらかな青緑色。
決して派手ではないが、静かな存在感が部屋全体を支配している。
「これは親父が大事にしていました。」
依頼主がぽつりと言う。なるほど。ようやく話がつながった。
庭師として植物を愛した先代。
植物を引き立てる鉢にも自然と目が向いたのだろう。
植木を育てる人間は、器も育てる。安物でも木は育つ。
しかし、美しい鉢に植えられた一本の松は、どこか誇らしげに見える。
人間も同じかもしれない。立派な服より、立派な心。
などと言うと聞こえはいいが、我々骨董屋はやはり立派な鉢を見ると顔が緩む。
商売人とは実に現金な生き物である。
査定額は一気に跳ね上がった。
依頼主も驚く。「そんなになりますか。」
「こちらは別格ですね。」先ほどまでの昭和組とは違う。
長い年月を生き抜き、持ち主が変わってもなお価値を失わない器たちである。
最後は笑顔で握手。
無事に買取成立。
帰り道、相方が言う。
「今日は最後の部屋がなかったら危なかったですね。」
まったくその通りだ。
骨董屋という仕事は、人生そのものによく似ている。
最初から宝物が見つかることなど滅多にない。
期待して裏切られ、肩を落とし、それでも最後の一部屋を信じて歩き続ける。
だから面白い。
人も器も、見かけだけで値打ちは決まらない。
庭の片隅で埃をかぶっていた蘭鉢や万年青鉢が、その日一番の主役になることもある。
そして我々骨董屋は、今日もまた次の電話を待つ。
次こそは天下の名品か、それともホームセンター育ちの植木鉢百連発か。
その答えは、玄関の扉を開けるまで誰にも分からない。
だから骨董屋は今日も車を走らせる。
夢と希望と、少しばかりの湿気を積み込みながら。
では、また次のお宅で。
この万年青については下記で詳しくお話しておりますので最後までお付き合いください。宜しくお願い致します。
買取品の詳細

◇この「おもと」は京楽焼の古手のもので金銀赤などの色遣いがとても細やかで豪華な絵付けの蘭鉢でした。絵柄も「鳳凰」でなんとも縁起が良いおもとでした。明治期の物ですが大きなダメージもなく中国の紫檀や黒檀の茶棚にいれて眺めると部屋がとても趣が出てる重厚感のある客室に変身すると思います。
買取査定額

◇おもと鉢の買取査定額もしくは評価額ですがまず第一に作者や工房の知名度や時代、そして何よりも図柄や意匠、ほかには刻印や鑑定書があればより高価買取できます。ご自宅におもとが御座いましたら一度拝見させてください。もちろん状態や時代、作者、作品でもお値段は変わりますのでご了承ください。
■過去の作品買取例

京楽焼 雲鶴文 蘭鉢 300,000円
太鼓胴青海波瑠璃 富貴蘭鉢 150,000円
萬葉 錦鉢・蘭鉢 50,000円
一角鉢 萬年青鉢 30,000円 他多数
おもと(万年青)鉢とは?

おもと鉢(万年青鉢)は、蘭鉢と並んで日本を代表する伝統園芸鉢の一つです。骨董品の世界では「蘭鉢」と混同されることもありますが、実際には用途や意匠、歴史的背景に違いがあり、愛好家の間では別のジャンルとして扱われています。
おもと鉢(万年青鉢)とは
おもと鉢とは、万年青(おもと)という日本古来の観葉植物を栽培・鑑賞するために作られた専用の鉢です。
万年青は一年中青々とした葉を保つことから「長寿」「繁栄」「家運隆盛」の象徴とされ、江戸時代には武家や大名、豪商の間で非常に人気を集めました。特に、徳川家康が江戸入府の際に万年青を持参したという伝承もあり、それ以降「引っ越しには万年青を最初に入れると縁起が良い」という風習が広まりました。
そのため、おもと鉢は単なる植木鉢ではなく、植物を飾るための「工芸品」として発展しました。
おもと鉢の特徴
蘭鉢と似ていますが、いくつか特徴があります。
① 深胴で安定感がある
蘭鉢よりやや深めに作られ、
- 根が十分張れる
- 水持ちが良い
- 株が安定する
という実用性があります。
また三つ足・四つ足が付くものも多く、高級感があります。
② 楽焼が主流
おもと鉢は**楽焼(京楽焼)**が圧倒的に多く、
- 黒楽
- 赤楽
- 色絵楽
などがあります。
楽焼特有の柔らかな質感は万年青との相性が良いとされます。
③ 豪華な装飾
高級なおもと鉢になると
- 龍
- 唐獅子
- 鳳凰
- 松竹梅
- 七福神
- 宝尽くし
- 家紋
など縁起の良い図柄が立体的に描かれます。
蘭鉢よりも立体感のある盛り上げ装飾(イッチン技法)が多いことも特徴です。
錦鉢とは
愛好家が最も価値を認めるのが錦鉢です。今回の鉢もこの部類に入ります。
錦鉢とは
- 手描き
- 金彩
- 色絵
- 盛り上げ
を施した最高級のおもと鉢です。
品評会では鉢そのものも評価対象となるほど重要です。
黒楽鉢
普段の栽培では黒楽鉢がよく使われます。
特徴は
- 黒一色
- 装飾は少ない
- 根張りが良い
- 通気性が高い
実用品として現在でも人気があります。
歴史
江戸時代
万年青は江戸中期になると爆発的な人気になります。
現在のラン展のように
- 品評会
- 売買
- 品種改良
が盛んになり、高価な品種は武士の年収並みとも言われました。
それに合わせて鉢も豪華になっていきます。
明治時代
明治になると
- 東京
- 京都
- 大阪
に専門窯が誕生します。
職人が競うように美しい鉢を制作しました。
大正・昭和初期
この頃がおもと鉢の黄金期です。
名工による作品が多数制作され、
現在骨董品市場で高く評価される作品の多くはこの時代です。
著名な窯元・鉢師
① 手島窯(東京)
もっとも有名なおもと鉢窯の一つです。
手島揫二は明治15年頃に開窯し、自ら万年青を栽培しながら鉢を研究したと伝えられています。
特徴は
- 白い盛り上げ(イッチン)
- 龍
- 富士山
- 唐獅子
- 繊細な色絵
現在では現存数が少なく、高級骨董として扱われます。
② 京楽焼
京都の楽焼系統。今回の買取品と同格の物です。
特徴は
- 黒楽
- 赤楽
- 金彩
- 上品な色使い
蘭鉢にも多く見られます。
③ 布施覚
現代を代表する名工の一人で、
- 龍
- 唐獅子
- 牡丹
などを精巧に描いた作品が人気です。

■参考サイト

■その他の買取品目
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