
福岡市城南区で江口智子作ガラス花入を買取りました!

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◎今年の福岡の梅雨というやつは、どうも人間に相談もなく退職届を提出したらしい。昨日までは「まだおります」と言わんばかりに空一面へ灰色の布団を敷き、朝夕には「まあ、扇風機でも回しておけば十分でしょう」と遠慮がちな顔をしていたくせに、梅雨明け宣言が出た翌日には「あとは頼んだ」と姿をくらまし、代わりに真夏という乱暴者を送り込んできた。
その乱暴者ときたら遠慮という言葉を辞書ごと燃やしてしまったような勢いである。
朝から太陽が頭の真上で仁王立ちをし、アスファルトは目玉焼きでも焼けそうな熱を放ち、自宅では普段は静かに壁へ張り付いているエアコンたちが一斉に目を覚ました。
一階も二階も寝室も居間も仕事部屋も、「ブォーッ」と唸り声を上げながら働き始める。
まるで労働組合のストライキとは無縁の優秀な社員である。
その姿を眺めながら、私は思う。
「この電気代というやつだけは、どうして景気に左右されず元気なんだろう。」
物価は上がる。
ガソリンも上がる。
米まで上がる。
給料だけが昔を懐かしむ老人のように動かない。
まことに日本という国は、財布だけが少子高齢化しているようである。
そんな世の中であるが、我々骨董屋だけは相変わらずのんびりしている。
世間では暑いだの危険だの熱中症警戒アラートだのと大騒ぎである。
テレビでは朝から晩まで「不要不急の外出は控えてください」と繰り返す。
しかし骨董屋の外出は不要でも不急でもない。
依頼があれば車へ乗り込み、のそのそと現場へ向かう。
急ぐ理由がないので、信号には素直に従い、コンビニがあればアイスコーヒーを買い、相方と「あっついですねえ」と他人事のような会話を交わす。
今日の依頼先も福岡市内。
内容は茶道具や掛軸など一式。
しかも依頼人から一言。
「今日は相見積もりなんです。」
普通の商売人なら、この一言で目の色が変わる。
営業マンなら笑顔が二割増しになり、査定員なら電卓を叩く指がピアニストのように踊り始める。
「ぜひ当社で!」
「頑張らせていただきます!」
「他社には負けません!」
などという暑苦しい言葉が飛び交うのであろう。
ところが骨董屋という生き物は、どうもその辺りの神経が一本足りない。
「そうですか。」
それだけである。
相方も横で「そうですかねえ。」と涼しい顔。
二人合わせても体温より危機感の方が低い。
茶碗を一つ。
掛軸を一本。
棗を一つ。
箱を開けては閉め、開けては閉める。
途中で欠伸が出そうになるが、依頼人の前なので辛うじて飲み込む。
真剣に査定していないわけではない。
むしろ真剣なのである。
ただ、その真剣さが高校球児のように汗を飛ばす種類ではなく、昼寝をする猫ほど静かなだけなのだ。
骨董という世界は不思議なもので、大声を出したから値段が上がるわけでもない。
長く見つめたから名品になるわけでもない。
最後は経験と勘と市場価格。
つまり、どれほど眉間へ皺を寄せても数字は変わらない。
ならば涼しい顔をしていた方が体力も減らず合理的である。
もっとも、その合理性が世間へ通じるかどうかは知らない。
査定が終わり金額を申し上げる。
依頼人は少し驚いた顔をした。
どうやら他社より高かったらしい。
こちらは別に勝負したつもりもない。
相見積もりという戦場へ麦わら帽子をかぶって散歩しに来ただけなのだが、結果として成立してしまった。
世の中、力む人ほど空回りし、力を抜いた人間ほど物事がうまく進む。
人生も骨董も案外そんなものかもしれない。
買い取った品物を改めて眺める。
茶道具。
掛軸。
香合。
茶碗。
花入。
そして、これらの多くは近いうち骨董品市場のオークションへ旅立っていく。
我々はその途中駅の駅員みたいなものだ。
右から左へ送り出す。
時には長居する品物もあるが、大半は次の持ち主を探して静かに旅立つ。
ところが今回、一つだけ私の手が止まった。

アンティークではないがガラス作家の作品である。
透明なガラスの中へ閉じ込められた色彩。
光を受けるたび違う顔を見せる。
思わず暑さを忘れて見入ってしまった。
「これはいいですね。」

珍しく私の声に少しだけ熱が入る。
相方が横から、
「今日は珍しく骨董屋らしい顔をしていますね。」
と笑う。
どうやら普段は骨董屋らしく見えていないらしい。
まあ、それも仕方ない。
仕事中でも昼寝が似合うと言われる男である。
しかし好きな作家の作品だけは別腹である。
人間とは勝手な生き物だ。
興味のないものには欠伸を噛み殺し、好きなものになると急に饒舌になる。
学者も骨董屋も、その辺りは案外変わらない。
荷物を車へ積み終える頃には、汗だけは一人前に流れていた。
涼しい顔をしていたつもりでも身体は正直である。
空を見上げると入道雲。
蝉は「夏だ夏だ」と朝礼でも始めたように鳴き続けている。
今年の夏も長そうだ。
だが、暑かろうが寒かろうが、相見積もりだろうがそうでなかろうが、明日もまたどこかで誰かが「骨董品を見てください」と電話をくださる。
その時も私は相方と車へ乗り込み、世間ほど慌てることなく、欠伸を一つ飲み込みながら現場へ向かうのだろう。
骨董屋という商売は、汗で値段が上がる世界ではない。
だから今日も涼しい顔をしている。
いや、本当は暑くてたまらないのだが、それを顔へ出さないのも、長年この商売で身についた、ささやかな芸の一つなのである。
では、また。
買取品の詳細
◇この「ガラスの手提花入」は金銀流水文様の名がついており熔壌ガラスの技法により独特の背景になっています。とても綺麗で水を入れると全く違った色彩に変化するガラス花瓶です。特筆は窓際に置いておくと光の差し込みによって変化する美しい光をお部屋に注ぐことができるガラスです。ありがとうございました。
買取査定額

◇江口智子さん作品の買取査定額もしくは評価額ですが制作年代や色彩、ほかには共箱や共布などあればより高価買取&できます。ご自宅にガラス作品が御座いましたら一度拝見させてください。もちろん状態や時代、作者、作品でもお値段は変わりますのでご了承ください。
■過去の作品買取例

手描ガラス 棗 40,000円
ガラス 茶入 30,000円
人魚姫の花器 25,000円
水芭蕉 水指 17,000円 他多数
ガラス作家「江口智子」とは?

江口智子(えぐち ともこ、1960年頃-2017年)は、日本の現代ガラス工芸を代表する女性作家の一人です。ガラスと天然の土を融合させた独自技法「熔壌(ようじょう)ガラス」を継承・発展させ、日本の自然や四季、生命の営みを題材にした作品を数多く制作しました。
一般的な吹きガラスや切子とは異なり、「土」と「ガラス」という本来は相反する素材を一体化させる表現は、日本のみならず海外でも高い評価を受けています。2017年に惜しまれつつ逝去しましたが、その作品は現在も多くの愛好家や美術工芸関係者に高く評価されています。
略歴
江口智子は1960年頃に生まれ、若い頃からガラス工芸に魅了されました。
1988年頃よりヨーロッパのスタジオガラス技法を学び、本格的にガラス制作を開始します。その後、日本のガラス工芸界の巨匠として知られる江副行昭(えぞえ ゆきあき)に師事し、独自技法である「熔壌ガラス」を学びました。1990年には「まゆら大賞」を受賞し、将来を期待される若手作家として注目されます。
1993年には江副から正式に熔壌ガラスの技法を継承し、銀座松屋や名古屋丸栄など全国主要百貨店で襲名展を開催しました。
1994年には長野県伊那市の「南アルプスアートヴィレッジ信州」に工房を構え、本格的な制作活動を開始します。自然豊かな環境は、その後の作品世界に大きな影響を与えました。
作風の形成
江口智子の作品には一貫して
- 自然との共生
- 大地の生命力
- 光と時間
- 四季の移ろい
というテーマが流れています。
彼女は単なるガラス工芸家ではなく、「土」「火」「光」という自然そのものを素材として作品を制作する芸術家でした。
熔壌(ようじょう)ガラスとは
江口智子を語るうえで欠かせないのが「熔壌ガラス」です。
これは師である江副行昭が考案した技法で、
- ガラス
- 天然の土
- 岩石
- 鉱物
を約1200~1400度の高温で一体化させるという非常に高度な技法です。
通常、土とガラスは膨張率が異なるため一緒に焼くと割れてしまいます。
しかし長年の研究によって配合を工夫し、
「土がガラスへ溶け込む」
という独特の質感を実現しています。
作品の特徴
① 土とガラスの融合
作品最大の特徴は、
「透明感」と「土の温もり」
が同時に存在することです。
ガラスだけでは表現できない柔らかさがあり、陶器とも違う神秘性があります。
② 光による変化
江口作品は昼と夜で全く表情が変わります。
自然光では落ち着いた土味を見せ、
照明を当てると内部から幻想的な輝きが現れます。
この変化を楽しめることも人気の理由です。
③ 日本の自然を表現
作品には
- 桜
- 山々
- 森林
- 湖
- 星空
- 花
など、日本の風景を思わせる意匠が多く見られます。
ガラスでありながら「和」の世界観を感じさせる点が特徴です。
④ 有機的なフォルム
工業製品のような左右対称ではなく、
自然石や植物のような
「ゆらぎ」
を意識した造形が多く、
見る角度によって印象が変化します。
代表作品
江口智子は一点制作が中心であり、シリーズ名で知られる作品が多くあります。
「星になった人々」
信州博覧会で発表された大型作品。
人と宇宙とのつながりをテーマに制作され、
光を受けると無数の星が浮かぶような幻想的な作品です。
「宇宙船」
2000年の日蘭交流400周年記念事業として制作。
未来への希望と人類の共生をテーマにした大型オブジェで、公共空間にも設置されました。
花器シリーズ
最も人気が高い作品群です。
ガラス内部へ土を取り込み、
植物との調和を重視した作品が多く、
茶道や華道の世界でも愛用されています。
茶器・酒器
日本文化との融合を目指した作品群で、
土の温かみとガラスの透明感を兼ね備えた器は実用性と芸術性を兼ね備えています。
香水瓶・小品
女性ならではの繊細な色彩感覚が表れた作品群で、
紫・青・琥珀色などを重ねた幻想的な色合いが特徴です。
主な受賞歴
公表されている主な受賞歴としては、
- 1990年 まゆら大賞受賞
- 日本スタジオグラス協会選抜作家
- 各地で個展・企画展を開催
などが知られています。
なお、江口智子は競技的な公募展よりも個展や百貨店美術画廊での発表を中心に活動していたため、公表されている受賞歴は比較的多くありません。
展覧会・主な活動
江口智子は全国各地で数多くの個展を開催しました。
代表的な会場には
- 銀座松屋
- 名古屋丸栄
- 全国主要百貨店美術画廊
- ギャラリー各所
などがあります。
また、
- 1998年長野オリンピック文化プログラム参加
- 日本スタジオグラス協会野外ガラスモニュメント展出品
- 2014・2015年上海アートエキスポ出展
など国内外で活躍しました。
江副行昭との関係
江口智子は、熔壌ガラスを創始した江副行昭の最も重要な後継者の一人でした。
江副は35年以上かけて熔壌ガラスを完成させましたが、その技法を正式に受け継いだ人物が江口智子でした。
2017年に江口が病没したことは江副に大きな衝撃を与え、その後は創作活動をほぼ終えることとなりました。二人が最後に共同制作した花入れは、師弟の絆を象徴する作品として紹介されています。
骨董品の市場での評価
江口智子作品は制作数が少なく、一点物が中心であるため市場に出回る機会は多くありません。
特に
- 花器
- 酒器
- 茶器
- オブジェ
などは人気が高く、保存状態や作品の大きさ、制作年代によって評価額が変わります。
工房時代の作品や個展出品作、箱書きや共箱が揃った作品は評価が高まる傾向があります。また、近年は女性ガラス作家への関心の高まりもあり、美術市場での注目度は上昇しています。
最後に…江口智子は、「ガラスは冷たい素材」という従来のイメージを覆し、土の温もりと光の透明感を融合させた独自の世界を築き上げた作家でした。師・江副行昭から受け継いだ熔壌ガラスの技法を発展させ、日本の四季や自然観、生命の美しさを作品に昇華した功績は、日本の現代ガラス工芸史において重要な位置を占めています。

■参考サイト
高遠町歴史博物館(長野県伊那市)
南アルプスアートヴィレッジ信州(旧工房)

■その他の買取品目
★骨董品買取の福岡玄燈舎では古美術品の他、アンティークや掛軸、茶道具、書道具、絵画、仏像、勲章、中国陶磁、甲冑など多彩な骨董品を査定買取しております。お見積りだけでも構いませんのでお気軽にご相談ください。












































