福岡市中央区で辻石斎の松蒔絵「棗」を買取りました!

◇骨董品買取の福岡玄燈舎です。

福岡市の中心部にあるそのマンションは、目立たない場所にひっそりと佇んでいました。レンガ造りのレトロな外観とは対照的に、中に入ると上品で穏やかな空気が漂っていました。その日、私は骨董品の査定と買取のために訪れたのです。依頼主は年配の女性で、その義母が茶道の先生をしていたとのことでした。言葉少なに案内された部屋は、まるで時が止まったかのような静けさがありました。

その一室には茶室があり、和の心を映すかのように、完璧に整えられていました。畳の上には、何とも言えない緊張感が漂っていました。それもそのはずです。床にはおよそ200個にも及ぶ桐箱がずらりと並んでいました。桐箱といえば、その中にはどんな宝が眠っているかわかりません。私はその重みを感じつつ、腹を決めました。

「これすべて茶器ですか?」と尋ねると、依頼主は小さく頷きました。彼女の表情には、何か期待と不安が入り混じった様子がうかがえました。まるで大切な記憶を預けるかのように見えました。私は一つ一つ、桐箱を開け始めました。箱を開ける度に、ひやりとした空気が流れ、まるでそこに息づくような芸術品が姿を現しました。茶碗、棗、茶入れ。どれもが名匠の手によるもので、見る者の心を奪う逸品ばかりでした。私は、茶碗の曲線を指でなぞりながら、その作者や品物の歴史、蒔絵の美しさを確かめていきました。

これらの茶器は、時代を超えて伝わる美術品レベルの茶道具でした。しかし、その価値を見極めるのは簡単ではありません。私はプロとして、依頼主に誠実に向き合いながら、冷静に価格を査定していきました。お互いの心の中には、それぞれ異なる重みがあったに違いありません。

「これは素晴らしい品です。しかし、現在の市場では…」と、私は慎重に言葉を選びながら、価格を説明していきました。依頼主は時折、茶器をじっと見つめながら、私の話に耳を傾けていました。その姿は、まるで長い年月を経た友人との別れを惜しむかのようでした。

価格を付けるときの緊張感は、まさに一世一代の勝負のようでした。私の言葉一つ一つが、依頼主の心に響くかどうか、それが私の評価を決定づけるのです。それでも、私はプロとしてのプライドを持って、一つひとつの商品価値を丁寧に説明し、納得してもらうことに全力を尽くしました。

そして、すべての桐箱を開け終わり、査定も無事に終わったとき、依頼主の表情に安堵の色が浮かびました。「すべてお任せします」と彼女が言ったとき、私の中にもほっとする気持ちが広がったのです。それは、長い旅を終えたような、心地よい疲労感とともにありました。

その後、私たちはマンションの近くにある小さな喫茶で昼食を共にしました。和やかな雰囲気の中、珈琲の香りが漂う部屋で、静かに時が流れていきました。この仕事を通じて、ただ物を売り買いするだけではない、人と人との絆を感じる瞬間があります。それこそが、私の仕事における一番の報酬です。「ありがとうございます。ほかにも掛軸絵画もあるので次もお願いします」と依頼主が微笑みながら言ったとき、その言葉が私の心に深く響きました。

今回の戦利品の一つの蒔絵の棗を手に取るたび、私はその美しさとともに、その品物が持つ歴史と、依頼主の思いを感じていました。時間はかかりましたが、そのすべてが意味のある瞬間だったのです。そして、私は満足感とともに福岡市の街を後にしました。茶室の静けさと、桐箱の中に眠る美の結晶たち。その一つひとつが、私の心に残り続けることでしょう。この 棗については下記で詳しくお話しておりますので最後までお付き合いください。宜しくお願い致します。

買取品の詳細

 

◇今回の棗は「辻石斎の松蒔絵」です。高く盛り上げられた松の図柄に金蒔絵を施したものです。ところどころに螺鈿が垣間見られてそれがとても程よいアクセントになり高級感もあります。状態もとても丁寧に使用されきちんと保存された様子です。共箱もあり共布、栞も付属していた茶道具でした。ありがとうございました。

買取査定額

 

◆茶道具の中で今でも人気のある「棗」の買取査定額もしくは評価額ですがまず第一に作者の人気度と製作年代、蒔絵の豪華さ、次に状態、付属品の有無などでより高価買取できます。なお、今回買取したは「辻石斎」という塗師の作品で状態もよく、しかも付属品や元箱なども揃っているということで高価買取させていただきました。ありがとうございました。尚、ご自宅や倉庫に茶道具がありましたら是非、骨董品買取の福岡玄燈舎にお声掛け下さい。宜しくお願い致します。

高蒔絵の中にチラッと見える螺鈿が美しいですね

■過去の作品買取例

棗の中もとてもきれいな状態です

光悦写金彩螺鈿船橋蒔絵平棗 300,000円
北大路魯山人好 大椀五客    150,000円
羽衣蒔絵 内梨子地 平棗棗 金蒔絵  100,000円
坐忘斎書付 尻張溜棗     50,000円 他多数

辻石斎とは?

塗師 辻石斎は、石川県山中温泉を拠点に活躍する漆芸家です。天保11年(1840年)の創業以来、茶道家元との交流を深め、茶道具を中心に数多くの作品を生み出してきました。辻石斎は、長年にわたり山中塗りの伝統を継承し、独自のスタイルを確立してきました。その過程で、様々な塗師から影響を受けていると考えられます。

  • 歴代の家元: 茶道家元からの指導は、辻石斎の作風を大きく形成したと考えられます。家元から求められる技術や美意識を学び、それを自身の作品に昇華させてきました。
  • 北大路魯山人: 二代・石斎は、北大路魯山人との交流を通じて、美に対する意識を大きく変えられました。魯山人の美意識は、辻石斎の作品に深く影響を与えています。

その他

  • ニューヨーク近代美術館での蒔絵実演: 辻石斎は、ニューヨーク近代美術館で蒔絵の実演を行うなど、積極的に山中塗りを世界に発信しています。
  • 魯山人展への企画参加: 魯山人展に企画参加するなど、魯山人の作品との関連性についても積極的に発信しています。

辻石斎は、伝統的な山中塗りの技法を継承しつつ、現代的な感覚を取り入れた新しい作品を生み出し続けている漆芸家です。茶道家元との交流や北大路魯山人との出会いなど、様々な経験が辻石斎の作風を形成し、現在もその技術と美意識は高く評価されています。

特に有名な商品をいくつかご紹介します。

 

茶道具

辻石斎は、長年にわたり茶道家元との交流を深め、数多くの茶道具を制作してきました。茶道具は、辻石斎の代表的な作品群であり、その技術の高さや美しさが際立っています。

  • 棗(なつめ): 茶道を象徴する道具の一つであり、辻石斎も数多くの棗を制作しています。漆の光沢や蒔絵の繊細な模様など、一つ一つに異なる魅力があります。
  • 食籠(じきろう): 茶懐石料理を盛り付けるための器で、辻石斎の食籠は、その形や模様の美しさから高い評価を得ています。
  • 香合(こうごう): 香を焚くための小さな容器で、辻石斎の香合は、そのコンパクトな中に凝縮された美しさが見どころです。

魯山人弁当

二代・石斎が北大路魯山人と親交があったことから、加賀の料理と山中漆器を組み合わせた「魯山人弁当」を監修しました。魯山人の美意識と辻石斎の技術が融合した、独創的な作品です。

その他

  • 唐人椀: 北大路魯山人が中国大陸で発見した馬上杯を元にして制作された代表作の一つです。山中塗ならではの光沢と、唐人画の繊細な表現が特徴です。
  • 一閑張日月椀: 北大路魯山人と共同で制作した作品で、大胆なデザインと高い技術力が融合されています。

◆山中塗とは…

山中塗は、石川県山中温泉を拠点とする伝統工芸品です。その歴史は古く、安土桃山時代にはじまります。山々を移動しながら木地師たちが山中温泉に定住し、木地を挽き始めたことが始まりとされています。当初は地元の温泉客向けに作られていた木地製品でしたが、次第に漆塗りの技術を取り入れ、より高度な漆器へと発展していきました。江戸時代には、加賀藩の保護を受けながら発展し、全国へとその名を知られるようになりました。

山中塗の特徴

山中塗の特徴は、木地の美しさを最大限に引き出すところにあります。

  • 拭き漆: 木地の木目を生かした拭き漆の技法は、山中塗の代表的な技法の一つです。漆を何度も薄く塗り重ね、木地の温かみを残した美しい仕上がりになります。
  • 加飾挽き: ろくろを回しながら木地に刃物をあて、様々な模様を付ける技法です。千筋、荒筋など、その種類は多岐にわたります。
  • 縦木取り: 木材を木目が縦になるように使うことで、器の強度を高め、変形を防ぎます。

山中塗の代表作品

山中塗の代表的な作品としては、が挙げられます。拭き漆で仕上げられた椀は、そのシンプルな美しさから多くの人々に愛されています。

  • 飯椀: 日常的に使用される飯椀は、山中塗の技術の粋を集めた作品です。
  • 汁椀: 汁物をいただくための椀で、さまざまな形状や模様があります。
  • 吸い物椀: 茶懐石料理などで使用される、蓋付きの椀です。

椀以外にも、などの茶道具、菓子器など、様々な種類の漆器が作られています。

有名な作家

山中塗には、数多くの優れた作家が輩出されてきました。

  • 辻石斎: 茶道家との交流を深め、茶道具を中心に数多くの作品を残した作家です。
  • 北出与三郎: 現代の名工に選定された作家で、伝統的な技法を継承しながらも、現代的な感覚を取り入れた作品を発表しています。

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■その他の買取品目

 

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