福岡市南区で「姫島竹亭」掛軸を買取りました!
◆福岡市南区の閑静な住宅街に足を踏み入れたその日、私はいつもと変わらず「のほほん」とした顔で現場に向かった。街は年末の賑わいに包まれていたが、そんな慌ただしさをよそに私は相も変わらず昭和のラジオドラマよろしく、どこかノスタルジックな空気を纏いながら骨董品の査定依頼に応じる日々である。
今回訪れたのは、ご主人が相続したという空き家。1年前から放置されていたというこの家、門扉にはクモの巣が張り、庭木はボサボサで「忘れられた秘密基地」といった風情。家主であるご主人は、東京在住のサラリーマンで、今回久しぶりに実家を訪れた際、亡きお父様の遺品整理に着手したという。
「正直なところ、何が出てくるか分からないんです。親父が生前こそこそ何か集めていたのは知っていたんですけどね。」とご主人は苦笑い。案内された部屋のドアを開けると、そこにはダンボール箱が天井近くまで積み上げられ、まるで骨董品のピラミッド状態。埃をかぶった箱たちは、無言のまま私を見つめているようだった。
まずは手始めに、近くの箱から開けてみる。茶道具、象牙の置物、ブリキのおもちゃ、浮世絵、巻物…。次々と出てくる怪しいものたるや、まさに「令和のトレジャーハンター」になった気分。しかし、宝探しとはいえども、その半分以上は「なんとも形容し難い微妙な代物」が占めるのがこの世界の常だ。例えば、一見して立派そうな掛軸も、中には「どうしてこんなものを掛けようと思ったのか」と突っ込みたくなるようなものも含まれている。
そんな中、一際目を引く作品があった。そっと埃を払いながら巻いてみると、それは「姫島竹亭」の金魚図であった。薄墨と淡い紅で描かれた金魚たちは、まるで今にも水の中を泳ぎだしそうな愛らしさ。控えめながらも洗練されたタッチに思わず「おお、これは…!」と声が漏れる。
実を言うと、姫島竹亭の作品は市場でもそこそこの人気があり、この金魚図は状態も非常に良く、保存状態が素晴らしい。さらに良い木箱に納められていたことも加点ポイントとなった。「これは良いお値段になりますよ」とご主人に伝えると、少し驚いた顔をされた。「まさかこんなものに価値があるなんて…」と呟くご主人。いやいや、世の中というのはそんなものである。見た目が地味でも、その背後にある価値は侮れない。
他の掛軸や書画も確認したが、残念ながら特筆すべきものは少なかった。いくつかの浮世絵には興味深いものもあったが、保存状態の劣化が悔やまれる。しかし、この金魚図だけは別格。私の中の「骨董屋魂」が久しぶりに高揚するのを感じた。
その後も作業は続き、ダンボール20箱を1つ1つ開封し、ひたすら査定を進める。象牙の根付やブリキのおもちゃには多少の値が付いたものの、全体としては「世間の趣味人が集めた無節操なコレクション」という印象が否めない。しかし、状態が良いものが多かったため、全体的に高めの査定を提示することができた。
査定が終わり、ご主人に最終的な金額をお伝えすると、その表情には安堵の色が浮かんでいた。「これで父の遺品も、どこかで誰かに喜んでもらえれば」と微笑むその姿に、こちらも心が温まる。骨董品というのは、モノ自体に価値があるだけでなく、それを手放す人や新たに手にする人との間に生まれるストーリーにも価値があるものだ。
こうして長い一日が終わり、私は再び福岡の街へと戻った。ダンボールの山に埋もれた宝探しのような時間に疲れつつも満足感を覚えながら、頭の中にはあの金魚たちが優雅に泳ぐ姿が浮かんでいた。今日もまた、骨董屋としてのささやかな幸せを感じながら、次なる出会いを夢見るのであった。
◇ 。この掛軸については下記で詳しくお話しておりますので最後までお付き合いください。宜しくお願い致します。
買取品の詳細
◇この「掛軸」は南画家の姫島竹亭作品で全体的に状態が良く色彩も淡く濃淡を生かした作品でした。軸先も象牙でとても良いものでした。ありがとうございました。
買取査定額
◇掛軸の買取査定額もしくは評価額ですがまず第一に作者の知名度、次に作品の人気度、ほかには状態が良く時代も古いものであればより高価買取が期待できます。
掛軸の買取相場ですが上記のように状態、作家、作品などでかなり差があります。ご自宅に掛軸や書画が御座いましたら一度拝見させてください。もちろん状態や時代、作者、作品でもお値段は変わりますのでご了承ください。
■過去の作品買取例
京都四季山水図 70,000円
設色國色天香図 60,000円
竹梅双鶴図 50,000円
他多数
姫島竹亭とは?
◇姫島竹亭(ひめじま ちくてい)は、明治から昭和時代に活躍した南画家であり、その優雅かつ品格ある画風は当時の文人たちから高く評価されました。
略歴
姫島竹亭は、明治28年奈良県に生れる。父の竹外は大阪南画壇を代表する画家。父に画法を学んで、大阪に住して山水 花鳥を得意として大阪南画壇で活躍した。昭和20年没。享年 51才。
特に、竹亭が影響を受けたのは池大雅(いけの たいが)などの南画の巨匠たちでした。彼らの画風や詩意あふれる作品に強い感銘を受けた竹亭は、「画」と「詩」を一体化させる南画の精神を追求し、自らの作品にもその要素を取り入れていきました。また、京都や江戸への遊歴を通じて他の南画家や文人たちと交流し、画技を高めていったと考えられています。
竹亭は、特に大正から昭和にかけての激動の時代においても、南画の伝統を守りつつ、自らの独自性を追求しました。明治以降の新しい芸術潮流にも関わらず、竹亭は南画の精神を貫き、後世の文人画家たちに大きな影響を与えることとなります。
作品の特徴
姫島竹亭の作品は、南画特有の「詩意」と「余白の美」を活かした作風が特徴的です。彼の描く山水画や花鳥画には、静謐な雰囲気が漂い、観る者に深い精神性を感じさせる力があります。以下に彼の作品の主な特徴を挙げてみます。
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山水画への傾倒
姫島竹亭の代表的な作品は山水画であり、遠くに連なる山並みや川の流れ、そしてそこに佇む庵や人々の姿を巧みに描き出しました。彼の山水画には、どこか中国の宋元画を思わせる静寂と詩情があり、日本的な温かみを感じさせる点が特徴です。 -
詩書画一体の世界観
竹亭は南画の理念に則り、画中に自作の詩や漢詩を添えることが多く、その詩書画一体のスタイルが彼の作品に奥深い魅力を与えています。竹亭自身も詩文に通じた文人であり、その詩情豊かな漢詩が画面にさらなる余韻を残します。 -
柔らかな筆致と淡い墨色
彼の作品には硬さがなく、柔らかで流麗な筆致が特徴的です。淡い墨色を使い分けることで、画面に深い陰影と立体感を与え、余白を巧みに生かすことで画面全体が広がりを感じさせます。これは池大雅や田能村竹田など、南画の巨匠たちの影響が色濃く表れていると言えるでしょう。 -
人物画や花鳥画
山水画だけでなく、竹亭は花鳥画や人物画にも優れた才能を発揮しました。特に、彼が描く花鳥画には優美な品格が漂い、鳥や草花の自然な動きや表情が見事に表現されています。また、人物画では文人や仙人を題材にし、気品と風格を持たせた描写が目立ちます。
影響を受けた人々
姫島竹亭は、後の南画家たちに大きな影響を与えました。彼の画風は、多くの門人や追随者を生みました。特に竹亭の精神性や詩書画一体の理念は、近代の文人画家にも受け継がれ、南画の衰退期においてもその精神を守り続けたとされています。
代表的な作品
竹亭の代表作としては、山水画や花鳥画が挙げられますが、現存する作品の多くは掛軸の形式で伝わっています。そのため、茶室や書院などで竹亭の作品が飾られることが多く、静かな精神性と美しい筆致が人々の心を和ませています。
例えば、代表作とされる「山水図」では、淡い墨色と柔らかな筆致によって遠近感が巧みに表現され、画中に添えられた詩が全体の趣を一層引き立てています。また、「花鳥図」においては、鳥の羽根や草花の描写に細やかな技巧が見られ、竹亭の観察力の鋭さと美意識が感じられます。
★代表作品5選
1. 「秋山清遠図(しゅうざんせいえんず)」
- 概要:姫島竹亭の山水画の代表作のひとつで、秋の山々を題材とした作品。
- 特徴:墨の濃淡を巧みに用い、山々の遠近感を表現しています。山水の風景に詩を添えた構成は、詩書画一体の南画の典型です。
- 見どころ:画面全体に漂う静謐な雰囲気が、自然の美しさと調和の精神をよく表しています。
2. 「寒江漁舟図(かんこうぎょしゅうず)」
- 概要:静かな冬の川を背景に、一艘の小舟と漁師の姿を描いた作品。
- 特徴:墨の淡いにじみを利用して、水面の冷たさと静けさを表現。漁師の姿が小さいながらも、画面全体に生命感を与えています。
- 見どころ:詩情豊かな冬景色とともに、竹亭の優れた筆致が際立っています。
3. 「梅花山水図(ばいかさんすいず)」
- 概要:梅の花と山水を組み合わせた画題で、竹亭の柔らかな画風が感じられる一作。
- 特徴:梅の白い花がシンプルな墨山水の中で際立ち、控えめながらも高雅な印象を与えます。
- 見どころ:花の繊細な描写と山水の構図のバランスが絶妙で、南画ならではの気品が漂っています。
4. 「南国風景図(なんごくふうけいず)」
- 概要:風景をモチーフにした作品。
- 特徴:中国南画の影響を受けた理想化された風景が描かれています。
- 見どころ:竹亭が自然に対して抱いていた愛情や敬意が伝わる作品。
5. 「松竹図(しょうちくず)」
- 概要:松と竹という南画の伝統的なモチーフを描いた作品。
- 特徴:竹のしなやかさと松の力強さを対比的に描き、画面に調和を生んでいます。墨の濃淡のコントラストが美しい一作。
- 見どころ:簡潔ながらも画家の高度な技量が反映された作品で、竹亭の詩が添えられている場合もあります。
6. 「四季山水図(しきさんすいず)」
- 概要:四季折々の風景を描いた屏風や掛軸形式の連作。
- 特徴:春夏秋冬それぞれの季節感を巧みに表現しており、特に四季の移り変わりを象徴する自然の要素(桜、紅葉、雪景色など)が印象的です。
- 見どころ:連作で楽しめる構成と、竹亭の詩情が随所に表れた力作。
◎関連、参考サイト
■その他の買取品目
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