福岡市中央区でブロンズ像を買取りました!
◇ブロンズ少女の微笑み ~あるアトリエでの珍道中~
12月に入り、冷たい北風に吹かれる季節となりました。骨董屋にとっては、この時期は「年末大掃除ついでに不用品も売ってしまおう」シーズンでもあり、依頼が続々と舞い込むありがたい季節です。そんな中、本日は「アトリエに眠るお宝を査定してほしい」とのご依頼をいただき、一路、小さなアトリエへ向かうこととなりました。
到着したそのアトリエは、一見すると普通の住宅街にひっそりと佇む隠れ家のよう。玄関から漂う独特な絵具の香りに、「アートの世界はやはり高尚だなぁ」なんて思いながらお邪魔しました。
中に通されるや否や、私の目に飛び込んできたのは……油絵、油絵、そしてまた油絵!前衛アートやら抽象画やら、とにかく壁から床に至るまで、絵の海に飲み込まれたような光景が広がっています。「私のような凡骨が踏み入れていい世界ではなかったかも……」と内心たじろぎつつも、お客様のお話を伺います。
どうやら、これらの絵画はほとんどが亡くなられたご主人の作品とのこと。情熱の全てを注ぎ込んだその作品群は、まさに「アトリエの遺産」と言えるものでした。しかし、骨董市場での価値は厳しいもので、ご主人の名声が市場に届いていなければ、残念ながら買取対象にはならないことを丁寧に説明しました。「愛情の価値は市場では測れません」と付け加えると、お客様も少しほっとした表情を浮かべられました。
さて、他に査定できるものは……と見渡すと、油絵の山に埋もれながらも、ぽつぽつと顔を出す古いアイテムたちを発見。アンティークのおもちゃや、レトロな看板、ランプなどを拝見しました。どれも味わい深いものばかりで、いくつか買取らせていただくことに。
ところが、ここからが今日のクライマックス。油絵の陰に隠れるように、ひっそりと立っていたブロンズ像に目が留まりました。「おや、これは?」と引き寄せられるように近づくと、それは一人の少女が静かに佇む、見事な大作でした。高さは75cmほど、堂々たる存在感に思わず息を呑みます。そして、台座に刻まれた名前を覗き込むと……「茂木弘行」。
「おぉ、茂木先生の作品ではないですか!」と心の中で小躍りしつつ、表面上は冷静を装います。「これぞ本日の目玉だ」と直感し、慎重に査定を進めました。このブロンズ像、古いものでしたが状態も良く、茂木氏という著名な作家の手による作品ということで、市場でも大変人気のある一品です。
最終的に、このブロンズ像は非常に良いお値段で買取させていただきました。お客様も驚きと喜びが入り混じった表情で、「こんな価値のあるものが家にあったなんて」とおっしゃっていました。私も最後に素晴らしいお宝と出会えたことに感謝しつつ、深々と頭を下げてアトリエを後にしました。
寒い冬の日に訪れた、心温まる出張査定。ブロンズの少女の穏やかな微笑みが、今でも目に浮かぶようです。そして、そんな偶然の出会いこそが、骨董屋という仕事の醍醐味なのだと、改めて感じた一日でした。
このブロンズ像については下記で詳しくお話しておりますので最後までお付き合いください。宜しくお願い致します。
買取品の詳細
◇この「ブロンズ像」は茂木弘行さんの作品で「バレリーナ」。シリーズのひとつだと思われます。古いので多少の擦り傷や汚れなどもありますが75cmというサイズは存在感がありとても貴重なものだと思われます。製作年や製作数量は不明です。ありがとうございました。
買取査定額
◇茂木弘行作品の買取査定額もしくは評価額ですがまず第一に作品の人気度、次に状態、ほかには鑑定書やギャランティーなどがあればより高価買取&できます。
ご自宅にブロンズ像やオブジェ、置物が御座いましたら一度拝見させてください。もちろん状態や時代、作者、作品でもお値段は変わりますのでご了承ください。
■過去の作品買取例
ブロンズ彫刻像「裸婦」限定5体 300,000円
寝そべる裸婦像『おと』ブロンズ彫刻 200,000円
裸婦像『女の半身像(おもひ)』 150,000円
ブロンズ 裸婦像 「ゆう」 45,000円 他多数
茂木弘行とは?
茂木弘行(もぎ ひろゆき)は、昭和後期から平成にかけて活躍した日本の著名な彫刻家で、特にブロンズ像の制作で知られています。その作風は、写実的でありながら情感豊かで、人間や自然の内面を丁寧に表現する点が特徴です。以下に、彼の生い立ちや作歴、受賞歴、そして同時代のライバル作家についてご紹介します。
生い立ちと作歴…
茂木弘行は1948年、東京都に生まれました。幼少期から絵画や彫刻に興味を持ち、美術教師であった父親の影響で美術の道を志します。1967年、東京芸術大学彫刻科に入学し、彫刻家の中村晋也や柳原義達の指導を受けました。在学中から国内外の彫刻展に出品し、才能を評価される機会が増えます。
大学卒業後はフランスに留学し、パリ国立高等美術学校で彫刻を学びました。この期間、ロダンやブールデルといったフランス彫刻の伝統に触れる一方で、ヨーロッパ各地の彫刻を研究し、自身の表現を深めていきました。帰国後は、写実を基調とした彫刻制作を本格化させ、日本の彫刻界で重要な存在となります。
彼の作品は、人物像を中心に、動物や自然をテーマにしたものも多く、いずれも繊細な造形と深い精神性を持つ点で高く評価されています。そのため、公共施設や美術館の常設展示として選ばれることが多く、一般の人々にも親しまれています。
受賞歴
茂木は国内外で数々の賞を受賞しています。以下は主な受賞歴の一部です:
- 1973年:新制作展に初出品し、優秀賞を受賞
- 1980年:日展で特選を受賞
- 1987年:中原悌二郎賞受賞(日本の現代彫刻を代表する作家として選出)
- 1995年:日本芸術院賞受賞
これらの受賞は、彼の作品が単なる技術の高さだけでなく、深い芸術性と時代性を備えていることを証明しています。
同時代のライバル作家たち…
茂木弘行が活躍した昭和から平成の彫刻界には、彼と同時代を生き、互いに刺激を与え合ったライバルたちがいました。代表的な人物を以下に挙げます:
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舟越保武(ふなこし やすたけ)
茂木の先輩にあたる存在で、日本における宗教的テーマの彫刻で知られています。舟越の作品は精神性の高さが特徴で、茂木の作風にもその影響が見られます。 -
佐藤忠良(さとう ただよし)
日本の写実彫刻を代表する作家で、茂木と同様に人間像の表現を得意としました。佐藤の作品は力強さが特徴で、茂木の繊細な表現と対照的な関係にあります。 -
平櫛田中(ひらくし でんちゅう)
茂木より一世代前の作家ながら、木彫や仏教彫刻で昭和彫刻界に影響を与えた巨匠です。茂木も平櫛の技術と精神を継承し、ブロンズという別分野でその意志を引き継いだといえます。
茂木の作品は、日本の伝統的な美意識と西洋彫刻の技法を融合させた点にあります。そのため、国内外で高い評価を得ており、若手彫刻家にも影響を与え続けています。また、公共彫刻として設置された作品の多さから、日常的に触れられるアートとして、多くの人々の心に残っています。彼の生涯を通じた芸術への情熱と努力は、日本彫刻界の発展に寄与するとともに、現在でも高い人気を誇る作品群を生み出しました。
★代表作品5選
茂木弘行の代表作品には、以下のような彫刻作品が挙げられます。
「少女像」高さ約75cmのブロンズ彫刻で、繊細な表現と均整の取れた美しさが特徴。今回の買取品もその一つです。
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「乙女と鳩」
立川市のアートコレクションに含まれる作品。動物と人を融合させた柔らかな表現が魅力です
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「雪椿の乙女」
北九州市立美術館の「美術の森公園」に展示。日本の自然美を取り入れた作品です
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「W.ウェストン像」
糸魚川市観光協会の展示物として知られ、彫刻家としての彼のダイナミックな一面を示しています
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「水辺の少女」
流れるような曲線が印象的で、時間を超えて愛されるデザインです。
これらの作品は、日本国内の美術館や公共施設に展示され、幅広い評価を受けています。
◎関連、参考サイト
■その他の買取品目
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