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福岡県春日市で筑前琵琶を買取りました!
今年の福岡は、夏になると遠慮という言葉を忘れるらしい。
ここ数日は連日四十度に届くのではないかと思うほどの猛暑が続き、朝から蝉どもは「短い命だから許してくれ」とでも言わんばかりに全力で鳴き続けている。道路のアスファルトは焼き魚の網のように熱を持ち、信号待ちをしているだけで人間までじっくり炙られていく。
もっとも、そんな暑さなど我ら骨董屋には関係ない……と格好よく言いたいところだが、本音を言えばエアコンの効いた店で古い茶碗でも眺めながら昼寝をしているのが一番幸せなのである。
しかし世の中とは不思議なもので、こちらが「今日は休もうかな」と思った日に限って電話が鳴る。
「和楽器を見ていただけませんか。」
その一言で、私と相方は重い腰を上げた。
仕事というものは、こちらの都合など一切聞いてはくれない。会社勤めなら「本日はリモート勤務で」とでも言えようが、骨董屋が「今日は暑いので査定はオンラインでお願いします」と言ったところで、お客様は楽器を画面越しに映してくださるだけである。それでは竹の質も漆の状態も分からない。文明は進歩したが、骨董品の査定だけは今も昔も足で稼ぐ商売なのである。
現地へ着くと、玄関を開けた瞬間、思わず息を呑んだ。
和楽器、和楽器、また和楽器。
尺八が壁に立て掛けられ、笙や篳篥が箱に収まり、三味線は何丁も並び、琴は部屋を横断するように鎮座している。その横では大きな和太鼓が「俺を運べるものなら運んでみろ」とでも言いたげに睨みを利かせていた。
まるで小さな民族音楽博物館である。
「演奏会でも始められるんですか。」
私がそう言うと、ご主人は笑いながら、
「若い頃から集めましてね。」
とおっしゃる。
骨董屋を長くやっていると分かる。
「集めました。」
この一言の裏には、長い年月と相当な出費が隠されている。
人は好きなもののためなら財布の紐など簡単にほどける。酒好きは酒を買い、本好きは本を積み、釣り好きは竿を増やし、骨董品やアンティーク好きは家族に内緒で桐箱を増やしていく。
これは万国共通の病気であり、今のところ完治した人を私は一人も知らない。
さて、査定である。
尺八は一本一本歌口を見て銘を確認する。
笙も竹の状態を調べる。
三味線は棹の材質や皮の傷みを確認する。
どれも大切に扱われてきたことはよく分かる。しかし残念ながら現在の市場は、持ち主の愛情に比例して値段が上がるほど甘くはない。
昔なら高値で取引されたものでも、今では買い手そのものが減ってしまった。
骨董市へ行けば、人より家具の方が多く並び、立派な箪笥が数千円でも動かず、座敷いっぱいの琴も「無料で差し上げます」と書かれている始末である。
便利さを追い求めた時代は、いつの間にか大きな物を邪魔者扱いするようになった。
畳の部屋は減り、床の間は消え、琴を置く場所はロボット掃除機の通り道になった。
和太鼓など買おうものなら、ご近所より先に奥様から苦情が来る。
「そんなもの、どこへ置くの。」
この一言で、多くの和太鼓が世に出る前に夢を終えているのである。
私は現状をご主人に正直に説明した。
「大変立派な品ですが、大型の楽器は現在の骨董品の市場では非常に厳しい状況です。」
ご主人は少し寂しそうに笑い、
「そういう時代なんですね。」
とうなずかれた。
骨董屋にとって、一番ありがたいのは、この一言である。
市場を理解してくださる方ほど話は早い。
逆にテレビの鑑定番組だけを信じている方ほど、「これは百万円でしょう」と夢を見ておられる。
夢を見るのは自由だが、夢で支払いはできない。
市場とは、いつの時代も現実なのである。
相談の結果、今回は三味線、尺八、笛類を中心にお譲りいただくことになった。
そして最後に、一挺の琵琶が現れた。
布を開けた瞬間、私は思わず姿勢を正した。

筑前琵琶である。
しかも五弦。
四弦は仕事柄よく拝見する。しかし五弦となると話は別だ。
明治以降、筑前琵琶が発展する中で生まれた五弦琵琶は、演奏表現を広げるために工夫されたもので、現存数も決して多くはない。
胴の造り、糸巻き、撥受け、桑の艶。
どれも長年大切に扱われてきたことが伝わってくる。
「これは良いですね。」
思わず声が漏れる。
相方も黙って頷く。
今日一日、汗を流して査定してきた苦労が、この一挺で報われたような気がした。
骨董屋という商売は面白い。
百件訪ねても何もない日もある。
逆に、一件だけで思いがけない出会いが待っていることもある。
だから暑かろうが寒かろうが、今日もまた車を走らせるのである。
すべての品を積み込み、書類を書き終えるころには、太陽はまだ容赦なく照りつけていた。
汗は滝のように流れ、シャツは雑巾のようになっている。
それでも五弦の筑前琵琶を眺めると、不思議と疲れが少しだけ軽くなる。
「今日はいい仕事でしたね。」
相方がそう言う。
「うん。暑さには負けたが、情には負けなかったぜ」などと訳の分からない事を言いながら車に乗り込む。
エンジンを掛けると、エアコンが人生で一番ありがたい文明の利器に思えてくる。
では、また。
買取品の詳細
◇この「筑前五弦琵琶」は状態もよく重量感もしっかりとあり装飾も象牙などで上質に仕上げられた琵琶でした。実際に演奏もできますが床の間や旅館のお部屋にインテリアとして飾っても存在感がありますのでお勧め致します。ありがとうございました。
買取査定額

◇古い琵琶の買取査定額もしくは評価額ですが状態と装飾、そのほかに工房や作家の銘や装飾の材料などにより高価買取&できます。ご自宅に琵琶や和楽器が御座いましたら一度拝見させてください。もちろん状態や時代、作者、作品でもお値段は変わりますのでご了承ください。
■過去の作品買取例

徳岡又右衛門作 「 楽琵琶 」 四弦五柱 800,000円
石田不識作 薩摩琵琶 600,000円
唐木蝙蝠彫刻 四弦 中国琵琶 200,000円
五弦琵琶 旭匠作 150,000円 他多数
和楽器の琵琶とは?

琵琶(びわ)は、日本を代表する伝統的な撥弦(はつげん)楽器であり、撥(ばち)を用いて弦を弾く楽器である。その力強く深みのある音色は、日本の歴史や文学、宗教、芸能と深く結び付いており、千年以上にわたり受け継がれてきた。現在では雅楽、平家琵琶、薩摩琵琶、筑前琵琶などさまざまな種類が存在し、日本文化を象徴する楽器の一つとなっている。琵琶は国の重要無形文化財にも指定され、その芸術的価値が高く評価されている。
琵琶の歴史
琵琶の起源は西アジアのリュート系楽器であると考えられている。これがシルクロードを経て中国へ伝わり、さらに奈良時代(8世紀頃)に日本へ伝来した。当初は雅楽で演奏される宮廷音楽の楽器として用いられ、現在の「楽琵琶」の原型となった。正倉院には当時の美しい装飾が施された琵琶が保存されており、当時から高い工芸技術が用いられていたことが分かる。
平安時代になると、琵琶は貴族だけでなく、琵琶法師と呼ばれる僧侶たちによって演奏されるようになる。彼らは琵琶を弾きながら経文や説話を語り、人々に仏教を広めた。その後、鎌倉時代には『平家物語』を語る「平曲」が成立し、琵琶法師による語り芸術が発展した。室町時代には最盛期を迎え、日本各地で演奏されるようになった。
しかし16世紀後半に三味線が日本へ伝わると、琵琶の人気は次第に衰える。それでも九州地方では独自の発展を遂げ、江戸時代には薩摩琵琶、明治時代には筑前琵琶が誕生した。これらは近代日本を代表する琵琶音楽となり、全国へ普及した。
琵琶の構造
琵琶は洋梨形または茄子形をした胴体をもち、短い棹(さお)の先に糸巻きを備える。一般的には4本または5本の弦を張り、柱(じ)と呼ばれる高いフレットを設ける。
演奏では三味線よりも大きな撥を用い、弦だけでなく胴にも当てながら力強く弾く。音だけでなく、撥が胴に当たる「打音」も音楽表現の一部であり、戦いの場面や自然の情景を迫力豊かに描写できるのが特徴である。特に薩摩琵琶では豪快な撥さばきが重要視される。一方、筑前琵琶では繊細で美しい旋律や語りが重視される。
琵琶の材料
琵琶は天然木を用いて製作される。
胴体には桑(くわ)の木が最も多く使われる。桑は硬く耐久性があり、長年使用することで音色が円熟する。また、筑前琵琶では桑材に桐板を組み合わせることが多く、柔らかく優雅な音色を生み出している。
棹も桑や花梨などの硬い木材で作られることが多く、柱には竹や象牙(現在では代替素材も使用)が使われる。弦はかつて絹糸が主流であったが、現在では耐久性に優れたナイロンやテトロンなどの合成繊維も広く利用されている。
撥には黄楊(つげ)、黒檀、水牛の角、べっ甲、樹脂などが用いられ、流派によって形状や重さが異なる。
琵琶の種類
現在主に演奏される琵琶は次の四種類である。
楽琵琶は雅楽で使用される最も古い形式であり、宮内庁の雅楽演奏などで見ることができる。主に合奏の中でリズムを刻む役割を果たす。
平家琵琶は『平家物語』を語るための楽器であり、琵琶法師による語りとともに演奏される。
薩摩琵琶は鹿児島を中心に発展し、武士の精神教育にも用いられた。力強い語りと豪快な演奏が特徴である。
筑前琵琶は福岡県で生まれ、盲僧琵琶を基礎に薩摩琵琶や三味線音楽の要素を取り入れて成立した。女性演奏家が多く、優美で叙情的な表現を特徴とする。今回の琵琶も筑前五弦琵琶でした。
琵琶が使用される音楽
琵琶は多くの伝統音楽で使用されている。
代表的なのは雅楽であり、宮廷音楽の中で重要な役割を担う。また、『平家物語』を語る平曲では、語りと演奏が一体となった独特の芸術を形成している。
薩摩琵琶では「敦盛」「壇ノ浦」「本能寺」など歴史物語を勇壮に語る作品が多い。筑前琵琶では歴史だけでなく、文学作品や唱歌、現代作品まで幅広い演目が演奏されるようになっている。近年ではオーケストラや現代音楽との共演も増え、海外公演も行われている。
有名な演奏家
琵琶音楽の発展に大きく貢献した人物として、筑前琵琶の創始者である橘旭翁が挙げられる。彼は盲僧琵琶を基礎に新しい音楽を創作し、筑前琵琶を確立した。また、その弟子である吉田竹子は東京で筑前琵琶を普及させ、多くの愛好者を育てた。
現代では重要無形文化財保持者(人間国宝)として活躍した山崎旭萃をはじめ、多くの演奏家が伝統の継承に努めている。

◎著名な琵琶製作者
琵琶は一本一本が手作りであり、高度な木工技術と音響設計が求められる。そのため製作者は全国でも少数である。京都や福岡、鹿児島には伝統を受け継ぐ工房が残っており、雅楽用の楽琵琶、薩摩琵琶、筑前琵琶などを専門に製作している。特に福岡県は筑前琵琶発祥の地として知られ、筑前琵琶の修理・製作を行う職人が活動している。また鹿児島では薩摩琵琶の伝統工房が現在も演奏家の要望に応じた製作を続けている。近年では後継者不足が課題となっており、伝統技術の保存が重要なテーマとなっている。
四世 石田不識(いしだ ふしき)
- 東京・虎ノ門の石田琵琶店四代目。
- 明治11年(1878年)創業の、日本で唯一の琵琶専門店として知られる工房を継承。
- 楽琵琶、平家琵琶、薩摩琵琶、筑前琵琶など、ほぼすべての種類の琵琶を製作・修理。
- 平成18年(2006年)に**文化庁選定保存技術保持者(琵琶製作)**に認定された。
石田克佳(いしだ かつよし)
- 石田琵琶店五代目。
- 父・石田不識の技術を継承し、現在は琵琶製作・修理を一手に担う。
- 楽器製作だけでなく薩摩琵琶奏者としても活動している。
- 東京文化財研究所では、石田克佳氏の琵琶製作技術が映像記録として保存されている。
■参考サイト

福岡市博物館
福岡市博物館には、明治から昭和初期に使用された四弦筑前琵琶・五弦筑前琵琶が収蔵されています。近年の新収蔵品展では、寄贈された筑前琵琶が展示され、その解説では筑前琵琶が盲僧琵琶から発展し、四弦・五弦へと改良されていく歴史が紹介されました。
成就院
■その他の買取品目
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