紫檀柄の鑿 買取りました/骨董品の買取は福岡玄燈舎
紫檀柄の鑿 買取りました
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福岡県春日市で鑿(大工道具)を買取りました!

福岡は梅雨本番である。

朝から雨が降っている。

いや、「降っている」などという生易しいものではない。空のどこかで巨大なバケツでもひっくり返したのかと思うほどの雨である。

テレビの気象予報士は、さも大事件のような顔で「線状降水帯に厳重な警戒を」と繰り返しているが、考えてみればこちらも毎日のように古い家の押し入れや納屋に首を突っ込んでいる人種である。多少の雨で驚いていては商売にならない。

世の中には雨が降ると外出を取りやめる人がいる。

賢明な判断だと思う。

だが骨董屋はそうはいかない。

むしろ雨の日ほど仕事が増える。

不思議なもので、家の片付けを思い立つ人というのは晴れた日に庭を眺めながら決心するのではなく、雨の日に押し入れを開けながら決心することが多いのである。

そして電話が鳴る。

「古いものがあるんですが」

この一言に骨董屋は弱い。

古いものがある。

日本中どこへ行っても古いものはある。

問題はそれが何であるかだ。

そしてたいていの場合、それは想像していたものとは違う。

そんなわけで本日は福岡県春日市へやって来た。

住宅街の中に残る青い屋根の少し大きな家である。

家というものは面白い。

外から見ると普通の家なのに、中へ入ると突然時間の流れが変わる家がある。

今回のお宅もそうだった。

玄関を上がった瞬間、昭和がまだ居座っていた。

しかもかなり頑固な昭和である。

家主さんの話によると、先代は宮大工だったらしい。

さらに古美術品の収集が趣味だったという。

この二つが重なると少々厄介である。

宮大工は良い道具を集める。

収集家は良い物を残す。

つまり倉庫や押し入れに何が潜んでいるか分からない。

期待半分。

不安半分。

骨董屋の心境とはだいたいそんなものである。

まず出てきたのは掛軸だった。

掛軸というものは日本全国どこの家にもある。

だが中身は実に様々だ。

名品もあれば土産物もある。

芸術もあれば修行もある。

時には持ち主の思い込みだけが立派なものもある。

今回は曼荼羅。

仏画。仏具

山水画。

なかなか賑やかである。

床の間一つで極楽にも中国にも行ける。

掛軸というのは便利な乗り物だ。

もっとも、現在の住宅事情では掛ける場所がない。

床の間が絶滅危惧種になって久しい。

昔は床の間の前で正座して季節を感じたものだが、今はテレビの前で天気予報を見て季節を知る。

時代というのは残酷である。

そして仏像も見せてもらった。

こちらは思ったより新しかった。

骨董屋という人種は古いものが好きだが、新しいものを嫌いなわけではない。

ただ新しいものを見ると少しだけ現実に引き戻される。

「江戸時代かもしれない」

という夢が、

「平成初期ですね」

の一言で終わる。

骨董品の世界は夢と現実の往復運動である。

次に出てきたのは中国のアンティークだった。

堆朱の香合。

花台

小さな置物。

これらは一時期、大変な人気があった。

日本人は中国美術が好きである。

そして中国人も中国美術が好きである。

お互い好きなので値段が上がる。

市場原理とは実に単純だ。

ただしブームというものは永遠ではない。

昨日まで宝物だったものが今日は棚の奥へ追いやられる。

骨董品は歴史を語るが、市場は案外気まぐれである。

一通り査定を終えた頃だった。

家主さんが思い出したように言った。

「あ、そういえば道具もありました」

骨董屋はこの言葉にも弱い。

なぜなら「そういえば」で出てくる物ほど面白いことが多いからである。

納戸の奥から長い箱が出てきた。

埃をかぶっている。

未使用品の鑿です/大工道具の買取も福岡玄燈舎
未使用品の鑿です

こういう演出は骨董品の発掘番組なら大歓声が上がる場面だが、現実は静かなものである。

蓋を開ける。

中に並んでいたのは鑿だった。

しかも未使用。

それも一本や二本ではない。

きちんと揃っている。

骨董屋は時々、不思議な気分になる。

人間は使うために道具を買う。

だが使われなかった道具も存在する。

この鑿もそうだった。

四十年前に購入され。

四十年間待ち続け。

結局一度も木に触れなかった。

道具として見れば少し気の毒である。

しかし保存状態としては理想的だった。

人生とは難しい。

働き続けた方が幸せなのか。

新品のまま眠る方が幸せなのか。

鑿に聞いてみたいが返事はない。

よく見ると柄は紫檀

龍の彫刻まで施されている。

作者銘はない。

だが作りは良い。

非常に良い。

当時の職人が本気で作った道具であることは分かる。

今なら同じ物を作ろうとしてもなかなか難しいだろう。

まず紫檀が高い。

彫刻も高い。

職人の手間も高い。

何より時間が高い。

現代人は忙しい。

忙しいので時間を買う。

昔の職人は時間を使って物を作った。

どちらが豊かだったのかは分からない。

龍は相変わらず睨んでいた。

四十年間箱の中にいたとは思えない迫力である。

おそらくこの龍は、自分がいつか宮大工の手で使われると信じていたに違いない。

だが現実は違った。

人間の計画など案外そんなものだ。

家を建てる予定も変わる。

仕事も変わる。

趣味も変わる。

残るのは箱に入った鑿だけである。

結局、査定額はかなりの金額になった。

掛軸。

中国美術。

大工道具。

どれも状態が良かった。

何より背景が良かった。

骨董品は物だけではない。

そこにある物語も評価される。

宮大工が集めた物。

大切に保管された物。

忘れられていた物。

それらが合わさって価値になる。

査定額を伝えると家主さんは驚いた顔をした。

そして少し嬉しそうだった。

その表情を見ると、こちらも少し嬉しくなる。

骨董屋の仕事は物を買うことだが、本当は記憶を受け継ぐ仕事なのかもしれない。

もっとも、そんな格好いいことばかりではない。

翌日にはまた別の家で大量の贈答品のタオルに囲まれている可能性もある。

現実はいつも地味である。

帰る頃には雨が少し弱くなっていた。

軒先から道路を見る。

濡れたアスファルトが鈍く光っている。

梅雨はまだ続くらしい。

気象予報士はまた忙しくなるだろう。

骨董屋も忙しい。

雨が降ろうが槍が降ろうが、どこかの押し入れにはまだ見ぬ品物が眠っている。

そして誰かが思い出したように言うのである。

「あ、そういえば奥に古いものがありました」

その一言に誘われて、今日もまた骨董屋は雨の中を走る。

案外、人生というものはその繰り返しなのかもしれない。

では、また。

買取品の詳細

◇この「作屋別誂えの鑿」は40年ほど前に購入されたもので実際には使用していない未使用品でした。さすがに箱や紫檀の柄の部分や金具などには経年のダメージはありましたが刃はtぽってもきれいな上質な鑿でした。首には龍の彫、柄には上質な紫檀材を今後はこのまま貴重なものとして保管しても良し、あるいは専門の方に道具としても重宝される追入鑿と思います。ありがとうございました。

買取査定額

◇古い鑿の買取査定額もしくは評価額ですが作者と作品名、次に状態や時代、ほかには刻印、共箱などあればより高価買取&できます。ご自宅に作家ものの大工道具が御座いましたら一度拝見させてください。もちろん状態や時代、作者、作品でもお値段は変わりますのでご了承ください。

 

■過去の大工道具の作品買取例

龍が彫刻されています/骨董品の買取は福岡玄燈舎
龍が彫刻されています

東京鑿 左市弘 鎬鑿 10本組 山崎正三作 500,000円
千代鶴是秀 「瑞應」 共箱 切出小刀  300,000円
玄翁 八角玄翁 鋼付玄翁 幸三郎 長谷川幸三郎作  280,000円
追入組鑿『月市弘』 拾本組   200,000円 他多数

追入れ鑿とは?

刃の状態もとても良いです
刃の状態もとても良いです

追入れ鑿は、日本の木工・大工仕事で最も広く使われる鑿(のみ)の一種です。家具製作、建具製作、指物、宮大工の造作仕事まで幅広く用いられ、「日本の鑿の基本形」といっても過言ではありません。叩いて使うことも、手で押して使うこともできる万能性を持ち、初心者から熟練職人まで必ず手元に揃える道具です。

「追入れ」という名称の由来には諸説ありますが、木材へ刃を追い込むように使うことから名付けられたと考えられています。日本の鑿は鋼と地金を鍛接した構造を持ち、追入れ鑿はその中でも最も標準的な形状です。柄の頭には「桂(かつら)」と呼ばれる金輪が取り付けられており、玄翁(げんのう)で叩いて使用します。

また、木材の表面を削る際には手で押して使用することもできるため、穴掘りから仕上げ削りまで一丁でこなせます。

主な用途

1. ほぞ穴加工

追入れ鑿の代表的な用途です。

木造建築や家具製作では、部材同士を接合するために「ほぞ組み」が使われます。ほぞ穴を掘る際、鋸で墨線まで切り込みを入れた後、追入れ鑿で不要部分を取り除きます。特に6mm~18mm程度の刃幅が頻繁に使われます。

2. 欠き取り加工

棚板や框(かまち)の取り付け部など、木材の一部を四角く掘り下げる作業です。

機械加工後の微調整にも使われ、ノミ跡を残さず平滑に仕上げる技術が職人の腕の見せ所となります。

3. 建具・家具の仕上げ

蝶番や錠前を埋め込む際の座彫り加工にも欠かせません。

特に建具職人は追入れ鑿を使って数ミリ単位の精度で加工します。鋭利な切れ味と正確な裏押しが要求されるため、高品質な鑿ほど真価を発揮します。

4. 面の修正・平面出し

鉋が入りにくい隅や溝の底面を整える用途です。

追入れ鑿の裏面は平面精度が高く、木材表面の微細な段差を取り除くことができます。裏の精度は鑿の品質を判断する重要な要素です。

追入れ鑿の構造

裏(うら)

日本の鑿の特徴が「裏すき」です。

刃裏にわずかな凹面を設けることで研ぎやすくなり、平面精度も維持できます。高級品では二つ裏、三つ裏など高度な加工が施されます。これは見た目だけでなく、掘削時の直進性やガイド性能向上にも役立ちます。

面取り

側面の角を落とした「面取り追入れ鑿」は、狭い箇所や蟻組み加工で使いやすく、現在の高級鑿では主流となっています。

有名な工房と作者

桂には錆が出ています/骨董品の買取は福岡玄燈舎
桂には錆が出ています

日本の鑿鍛冶は新潟県三条市、兵庫県三木市、東京都などが名産地です。

以下は特に評価の高い作者です。

舟弘

本名は舟津弘(ふなつひろし)。

戦後を代表する伝説的な鑿鍛冶として知られます。東京鑿の最高峰とされ、多くの宮大工や数寄屋大工が愛用しました。

特徴は、

  • 柔らかい切削感
  • 粘り強い鋼
  • 研ぎやすさ

現在も中古市場では非常に高値で取引されています。

田斎

新潟県三条市を代表する名工。

木目鍛えや特殊鍛造技術で知られ、鑿収集家の間でも人気があります。実用品としても極めて評価が高く、海外の日本木工愛好家にも広く知られています。

清久

三条鍛冶を代表する名匠。

切れ味が鋭く、仕上げ面の美しさに定評があります。家具職人や建具職人に愛用者が多く、「研げば研ぐほど良さが分かる鑿」と言われます。

宗家大内

兵庫県三木市を代表する老舗鍛冶。

現在も手打ち鍛造による追入れ鑿を製作しており、安定した品質と使いやすさで人気があります。プロ大工の実用品として高く評価されています。

五百蔵

播州三木を代表する老舗ブランド。

明治時代から続く鍛冶屋で、実用性と耐久性を重視した製品が多く、大工道具店でも定番となっています。

東源次

東京鑿の名門。

繊細な仕上がりと美しい鍛造肌で知られ、数寄屋大工や指物師に愛用されました。

左市弘

東京系鑿鍛冶の代表的人物。

切れ味の鋭さと粘りのバランスに優れ、現在もコレクターから高い人気があります。

現在では…

現代では機械加工やルーター加工が普及していますが、最後の仕上げは依然として追入れ鑿が担っています。

特に、

  • 宮大工
  • 数寄屋大工
  • 建具職人
  • 指物師
  • 家具職人

にとっては不可欠な道具です。

今回買取した作品の「作屋」」とは

「作屋」銘があります/アンティークの買取は福岡玄燈舎
「作屋」銘があります

一般に大工道具業界で「○○作」と刻印された鑿や鉋を見ることがありますが、「作屋」は特定の流派名というよりも、「自ら鍛造して作る職人・工房」を意味する業界用語的な表現として使われることがあります。一方で地域や道具店によって意味が異なり、明確な全国共通の定義はありません。

特に骨董品の業界では、

  • 問屋銘の鑿
  • 工房銘の鑿
  • 個人鍛冶銘の鑿

を区別する際に、

「これは問屋物ではなく作屋物だ」

という言い方をすることがあります。

つまり、

作屋=実際に鍛冶が製造責任を持って作った作品性の強い道具

というニュアンスです。

鑿の名工として知られる工房・作者

前回挙げた舟弘、田齋、清久、大内以外にも非常に多くの名工が存在します。

千代鶴是秀

大工道具鍛冶の世界では別格の存在です。

本名は池田是秀。

明治から昭和にかけて活躍し、鉋で特に有名ですが鑿や小刀も製作しました。

現在でも作品は美術工芸品として扱われることがあり、「近代大工道具の最高峰」と評価されます。

田齋明夫

現代鑿鍛冶の代表的人物です。

12歳で弟子入りし、長年にわたり職人向けの鑿を製作してきました。

受注生産中心で、特殊形状の鑿製作にも対応することで知られています。親子二代で工房を運営し、海外にも高い評価があります。

田齋道生

田齋工房の二代目。

若い世代ながら鍛造技術への評価が高く、伝統技術の継承者として注目されています。

中野正人

与板系鑿鍛冶の代表格。

個人工房で製作を続ける伝統工芸士で、与板の古典的な製法を守り続けています。

特徴としては派手さよりも実用性重視で、昔ながらの職人から評価が高いです。

左久作

東京鑿系統の名工。

現在では新品流通が少なくなっていますが、骨董市場では人気があります。

切れ味よりも「扱いやすさ」を重視する職人に支持されました。

黒田正広

鉋鍛冶として有名ですが、鑿も高い評価を受けています。

特に研ぎやすさと地金の質が優秀とされます。

参考サイト

竹中大工道具館

三木金物資料館

三条鍛冶道場

■その他の買取品目

 

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